2016年04月09日    希望が丘にて春蘭見出す

  
希望が丘にて咲く春蘭
希望が丘にて春蘭見出す    四季折々に咲く、 希望が丘・三上山周辺の山野草をずっと追っかけてきた。だけど、自生している春蘭の花には出会うことがなかった。 シュンランは漢字で「春蘭」と書き、文字通り春に咲く野生ランの代表格である。

 希望が丘の滋賀県文化振興事業団で、長年務められていた職員の話では、「昔、希望が丘一帯に掃いて捨てるほど見かけた。ツボミを酢の物にして食して、春の到来を味わったものだ」と話されていた。
 ここ5~6年、人づてに、「尾根筋に咲いている」との噂があったが、希望が丘のどこそこに春蘭を見たと言う人はいなかった。幾ら仲間であっても、滅多に観られない山野草については、居場所を中々明かしてくれないこともある。だから、何処かで自生していても、私が見出せないだけである。いずれにしても、かつて身近な花であったが、今や見かけることもできない幻の山野草となっていた。

 今年になって、山仲間から「昨年、〇〇に春蘭が咲いていた」と写真付きのメールをもらった。この吉報で自生していることが分かった。が、在りかが分からない。春蘭が好む、水はけがよく、日当たりの南東に面した風通しの良い斜面を徹底的に探したが、徒労に終わった。兎に角、探すとなると、難しいものである。

 何回、山を分けいっただろうか。そうこうしている時、探している近くを知人が通りかかった。「春蘭を探しているのだが知らないか」と尋ねると、咲いているところに連れて行ってくれた。

 一株に4ツの花を精一杯咲かせていた。やわらかな包葉に包まれた花茎は、ひょろりと伸び、その先に一花を付けていた。元々ラン科の花は、華やかで優雅なものが多い。しかし、この花は、少し下向き加減に咲く姿が、日本人女性を感じさせ、つつましやかである。この清楚な佇まいを醸し出す姿は味わい深い。

 花に近づき、舌弁などを間近に眺めてみると、淡緑色の花色の中に、赤紫色の斑点が、わずかに彩りを添えていた。清潔感を漂う淡緑色に、神秘性が伴う赤紫色とは、不思議な組み合わせである。どうしても花弁の奥はどうなっているのであろうかと、異色の斑点を伝って引き込まれてしまう。そもそも美しい花は虫たちを引き寄せるための物である。人も同じように感じることが面白い。 
 
 さて、人は、余にも美しいものを見るとひとり占めにしたい衝動に駆られるものである。春蘭にとっては、ここを安住の地として、根を下ろしたところだ。ここを移動させられる事は、甚だ迷惑なことである。

 希望が丘で見つかっている春蘭は、この一株だけ、末永く見守っていきたい。これで、希望が丘・三上山周辺の27番目の山野草となった。
 
むっくと蕾を出した春蘭3/25
希望が丘にて春蘭見出す
半開きの春蘭3/30
希望が丘にて春蘭見出す
4本とも開花した春蘭4/4
希望が丘にて春蘭見出す  



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Posted by nonio at 16:44 │Comments( 2 ) 山野草 希望が丘 山野草
この記事へのコメント
えみり-んさん

希望が丘で春蘭を見出したことに、価値を分かってもらえる人から
のメールは、大変嬉しい。
Posted by noniononio at 2016年04月10日 08:02
はじめまして、すごいですね!

希望ヶ丘でシュンランを見つけられましたか~~ びっくりです

毎日通っておられるのですね!
Posted by えみりーんえみりーん at 2016年04月10日 06:48
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