2023年10月01日    自然との調和:サギソウの美

 私は、近場の自生している山野草を探して楽しんでいます。時には、「ラン類」に出会ったときは、その日は、大自然をより身近に感じ、心豊かになります。

 野洲市には、近江富士として知られている三上山があります。加えて、鏡山(標高384m)が、湖南地域の北東端、湖東地域に接して、しなやかな丘のような山が張り出しています。そこには、荒川と善光寺川の二つの小川が、谷間を蛇行しながら流れています。その川辺にひっそりと山野草を育んでいるのです。 8月末から9月上旬、日野川に注ぐ善光寺川沿いの支流を遡り、球根性のランである「サギソウ」探しに、何回も足を運んできました。

 さて、ここに自生している「サギソウ」は、園芸種のサギソウと一味違うのです。

 菜園で栽培されたサギソウは、人の好みに合わせて柔らかな顔をしているのです。ところで、野生のサギソウは、シラサギの羽見立てられる細裂したギザギザ部分の花びらの切れ込みが鋭く、際立っているのです。

  と言うのは、サギソウの花粉媒介者である「スズメガ科のガ」が、長いストローのような口を使い、花の蜜を吸いにやってくる際、花弁にとまりやすくしているのです。スズメガが地球上に現れたのはおそらく数千万年前、新生代の初めだったと考えられています。
たったこれだけのことですが、途方もない長い年月の共進化によって出現した姿なのです。
 自然界では、突然変異や自然選択によって、生物の遺伝子が長い時間をかけて変化してきているのです。
植物たちは長年の進化の中で、遺伝子の突然変異がいつも不規則に起き続けていて、その内のどれかが子孫に受け継がれ、その形状や特性を磨き上げてきたのです。真白な花弁といい、シャープな切れ込みが、その結晶と言えるでしょう。
 私は、植物の自生していることに、深い深い畏敬の念を呼び起こされます。

 人が関与し、わずかな時間で創り出された「園芸種のサギソウ」と、自然の進化によってできたものとの対比は、考えさせられるものです。
 人間は自然の神秘的なプロセスを理解しつつも、それを自分たちの都合に合わせて変更しようとします。自然界では、頻繁に起こりえないことを、園芸や育種において、植物の姿を変えてきました。また、自然界では滅多に起こりにくい遺伝子組換えまでおこない、本当に短期間でその姿を変えさせています。遺伝子組み換えで出来上がった美は、いかがなものでしょう。

 自生しているサギソウが教えてくれることは、自然との調和が、本当の美しさと創造性の源であるということです。自然との関係を深め、植物と共存することは、私たちが持つ畏敬の念を育む一歩かもしれません。

 この丘陵地帯に足を踏み入れると、素晴らしい清流と森が織り成す世界に魅了され、何度も訪れています。私がその一人です。

自然との調和:サギソウの美
自然との調和:サギソウの美




































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