2025年01月08日    輪を描く木/岩尾山

 ある日、滋賀県南部と三重県境近くにある岩尾山へ、Aさんと出かけた。輪を描く木/岩尾山山麓には「一本杉」の名で親しまれている古木がある。
 この杉には、「最澄がここで食事をした後、地面に挿した箸が成長して大木になった」という伝説がある。平安時代に生まれ、1200年もの時を経たこの木は、日本の歴史そのものを見つめ続けてきた古木だ。その姿に会いたいと、ずっと願っていたのだが……。 

 この山は双耳峰なので、2つのピークを踏んで下山してきた。
Aさんが、何か珍しいものを見つけたのか、指をさした。指さした先に、それはあった。
木は太陽に向かって真っ直ぐに伸びていくのが常だ。だけど、その木
「すごいね、あんな形になっても、また太陽に向かって伸びていくなんて。自然の力強さを感じるよ」と、Aさんが驚いていた。

 私は、その窮屈な姿に、不意に胸が締めつけられるような思いを抱いた。
なぜ木は輪を描いたのだろう?その曲がりは、風に押されたからか、誰かに踏まれたからか、それとも大自然のいたずれなのか。

 もし金子みすゞさんがこの木を見たなら、どんな詩を綴るだろうか。そんな思いが頭をよぎった。

     ぐるりと回る木は
     涙顔なのか、それとも笑顔なのか。
     その顔は、いつまでも
     太陽を見つめていた。

     「まわり道しても、空へ行くんだ」
     そっと、太陽が囁く。
     「まっすぐじゃなくても、いいんだよ」

輪を描く木/岩尾山

 若くして亡くなった金子みすゞさんの詩の中で、私は「大漁」と「曼珠沙華(ヒガンバナ)」が特に好きだ。自然の力に感嘆し、その背後に隠された切なさを描く視点に、心を揺さぶられる。
 目の前に広がるぐるりと回る木。その姿に、金子みすゞさんの詩の中に通じる「自然へのリスペクト」と「隠れた切なさ」を感じた。そして、その木が教えてくれたような気がする――「どんな道を辿っても、空に届くことができる」と。

                 



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Posted by nonio at 18:50 │Comments( 0 ) 樹木
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