2014年06月01日    癒しの空間のブナ清水/アカヤシオ咲く

日付 :5月11日(日)
山名 :鈴鹿山系 ブナ清水~水晶岳
コース:朝明渓谷駐車場9:30~ ブナ清水11:30~ キノコ岩13:00~ 根の平峠14:10
     水晶岳14:50~ 朝明渓谷駐車場16:30

 朝明渓谷にはすでに100台以上の自家用車が満杯状態で駐車していた。
この山域は、鈴鹿山系の御在所山に次いで人気のあるところである。名古屋・伊勢方面からのアクセスが良いのであろう。でも、私にとっては、滋賀県から山越えとなり、行きそびれていた。

「皆さん、どこにいかれるのですか」と駐車場を管理しているおじさんに尋ねてみた。
「ここから、国見岳に登るか釈迦ケ岳へいかれます。ここは、これらの登山基地になっています」と説明。
「今日、大勢が来られています。日曜日と言うだけでなく、ピンク色の『アカヤシオ』が国見岳の山腹に咲いているのです」と付け加えた。

 我々の目指すブナ清水~水晶岳と言う言葉は聞かれなかった。しかし、ブナ清水は「知る人ぞ知る」癒しの空間がひろがっているところである。今回の案内役O氏は、長年鈴鹿山系を駆けまわっていた友人で、この時期、ここに連れて来たかったようである。

 旧千種街道の根の平峠を目指してゆっくりと高度を上げていった。根の平峠の少し手前の真新しい伊勢谷登山道の標示板に示された「ブナ清水」の矢印にしたがって進んだ。しばらくしてブナ林帯が現われた。 幾分広まった森林帯は明るく、見通しもよい程よい空間が広がっていた。常緑樹林と比べて葉が薄いブナ林特有のすがすがしい光景であった。 
 
 この谷の中央部の位置に、無造作に大きな岩石が積み重なり、その最も下の窪んだ穴から清冽な清水が湧き出ていた。近づいてみると「さらさら」と心地よい音が微かに聞き取れた。辺りは鳥のさえずり、木々や 葉の音さえしない、しっとりとした静寂が漂っていた。このブナ清水では、取り立てたブナの木に出合わなかったが、ブナ林の有りとあらゆる処から醸しだされてくる霊気と言うのか、おもむきが、安らぎと平穏を感じさせてくれた。 朝明渓谷から2時間ほどのところに、これほど心豊かにしてくれる異空間に出合えるとは、・・・・。
 私は、滋賀の色んなブナ林に足を運んできたが、またひとつ印象深いブナ林が増えたようだ。 滋賀の印象深いブナ林
 
癒しの空間ブナ清水
癒しの空間のブナ清水/アカヤシオ咲く
大岩の下から湧き水
癒しの空間のブナ清水/アカヤシオ咲く

 このブナ清水を後にして、尾根筋から釈迦ケ岳、遠くの御池岳など鈴鹿の山々を望み、キノコ岩の奇岩に寄り、青岳に向かった。この間何組もの団体登山客と出会った。目当てはアカヤシオの群落だ。
 既に数年前、鈴鹿山系の 鎌ヶ岳・水沢岳に訪れた時、ツツジ科のアカヤシオを目にしていた。淡紅紫色のアカヤシオの花びらは、丸みを持ち、艶やかな中に上品さがある姿をしている前知識があった。だから何か余裕を持って、この群生に接することが出来た。

 青岳の頂上付近から国見岳の中腹の山肌をピンクに染めていた。1か2つでない、100ケ以上でもない、数えきれない無数の直径5cmほどのアカヤシオの花冠が、一斉に空に向けているのであろう。ふもとから山上へと順次に上に向かってピンクの帯が広がっていた。仲間の一人が「アカヤシオの開花には当たり年と、そうでない年があるようだ。今年は丁度裏年にあたるのだが、よく咲いている」と話していた。
 アカヤシオは、日当たりと花崗岩質の水はけの良い土地を探し求めて、この山岳の山腹を自生域と決めた。人の手で育てられたものでなく、無論人に見せるためでもない。この厳しい環境こそが、居場所なのである。

 祖母山の頂上直下に鈴なりにかよわい花をつけていたアケボノツツジが、風に打ち負かされ、花びらが傷んでいた。こんな過酷な環境下では、堅牢な花弁をつければいいのにと思った。 九重山群のミヤマキリシマ(山ツツジ)は、山の裾野では殆ど見かけられなかったが、火山性ガスに晒され処を住みかとしていた。とかく、自然界に自生しているツツジは、たくましく不思議だ・・・・。

 アカヤシオ アケボノツツジ ミヤマキリシマ、何れも躑躅(ツツジ)である。私にとってはその違いは腺毛があるとかないとかどちらでもよい話である。いずれも、人の住まない高地に来なければ出合わない高貴な植物であり、謙虚に接しなければならない。と思っている。
アケボノツツジが咲く祖母山
ミヤマキリシマの久住山の山旅
 
青岳の頂上付近から国見岳の中腹のアカヤシオ群落
癒しの空間のブナ清水/アカヤシオ咲く
 
 青岳から根の平峠へザレた溝道を下っていった時、「山並みが少し窪んだようになった鞍部が杉峠」、と案内役O氏が指さして示してくれた。
滋賀県の甲津畑から杉峠・根の平峠の2つの峠を越えて三重県菰野町千種へ至る「千種越え」があるところだ。伊勢と近江を結ぶ重要な交易路であった。
 
 タイジョウ・雨乞岳・イブネなどから下山してくるとこの杉峠にたどり着いて、杉の古木の近くで必ず一休みしたところである。私の視線は深々とした濃い緑色した渓谷の向こうに見える国見岳と御在所岳、そして根の平峠へと思いを馳せていたところであった。今回、根の平峠方面からの逆方向から杉峠の鞍部を眺められ、感慨深かった。
 今では忘れられひっそりとした峠になっているが、古来からそれぞれの時代を反映した人々が行き来した由緒ある峠であった。伊勢へ進攻し織田信長、物資を運搬した近江商人、木を求めた杣人、そして銅山、マンガンの鉱山の鉱夫とにぎやかであった。
鈴鹿タイジョウ再挑戦

鞍部の杉峠を望む
癒しの空間のブナ清水/アカヤシオ咲く

癒しの空間のブナ清水/アカヤシオ咲く

 根の平峠から水晶岳の頂上に足跡を残したいだけで、往復して帰路についた。伊勢谷の川岸に大きな一本のシロヤシオを見つけた。
5弁をした真っ白な花と新緑の5枚の若葉とが重なり合い、少し翳ってきた空を埋め尽くしていた。アカヤシオの群生とは違ってシロヤシオの木の中から一つひとつの清楚な花弁を見ながら思わぬ贈り物とその美しさに堪能した。

純白の5弁をした花を咲かせたシロヤシオ
癒しの空間のブナ清水/アカヤシオ咲く
辿ったルート
癒しの空間のブナ清水/アカヤシオ咲く



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Posted by nonio at 05:15 │Comments( 0 ) 滋賀県の山
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