2012年09月07日    八ヶ岳白色のコマクサ

 梅雨が明けて、待望の夏山シーズンに入った7月27~29日、「コマクサ」が咲く八ヶ岳を訪れた。
1日目美濃戸から赤岳鉱泉(泊)2日目赤岳鉱泉ー硫黄岳ー赤岳(赤岳山頂小屋泊)3日目赤岳ー中岳ー阿弥陀ー美濃戸とゆっくりとした山旅であった。

八ヶ岳白色のコマクサ 昭和37年(1962 年) 、赤岳の頂上に立って以来、実に50年ぶりに同じところに立った。

 青春は再び戻ってこないと言うのは、当たり前のことだが、この地に立つと、当時の様子が「ふつふつ」と甦ってくるから不思議だ。今では立派な赤岳頂上小屋が建っているが、当時、風雪に強いように石にかこまれ、屋根にも石が積まれた質素な石室であった。 
 この地を踏んだと云うことは、他人にとってはどっちでもよい、たわごとにきこえるかもしれない。でも、私の中では、色んな山行の体験が重層しながら、整然と位置づけられている。

 山行は普段の生活とは違い、それなりの緊張感が伴い強く記憶が刻みこまれている。この何気ないちょっとした心の財産が、過去の私へと誘ってくれる。


 赤岳鉱泉小屋から朝の冷気を体に受け止、出発していった。森林帯の坂道を喘ぎながら登っていった。姿が見えないが鳥がさえずる声、渓谷を流れる水が岩とぶつかるせせらぎの音、木々がふれあう音など、耳を澄まさなくても色んな心地良い音がしていた。

 ダケカンバが見られようになり、ハイマツ帯の赤くザレた登山路を登り詰めて「赤岩ノ頭」までやってきた。何時しか音も消え去り、静寂な世界となった。そこは、森林限界を超え、木が育つことができない砂礫帯である。硫黄岳の頂上から、「大ダルミ」にかけて荒涼とした岩屑斜面が谷底まで広がっていた。 
 選りによって、砂礫が動いている過酷な環境を好んで生育している植物がある。「高山植物の女王」と呼ばれている「コマクサ」だ。花弁は4個で外側と内側に2個ずつつく。外側の花弁は下部が大きくふくらんで、先が反り返り、内側の花弁はやや小さく、中央がくびれ、上端は合着している。この姿は人工的には作りえない自然界がなしえた神秘的な曲線を持っている。
 高山で花粉を運ぶ数少ない虫を呼び込むため、ますます艶やかな姿に変身し、魅惑的なピンク色に進化してきたのであろう。
 自分の美しさを知っているかどおうか分らないが、確かに言えることは、ひとがこの「コマクサ」の美しさに呼び込まれて、こんな辺境地までやってくるようになってきた。そして「コマクサ」は、手厚い保護を受けるようになり、いまや一大群落をつくっている。

八ヶ岳白色のコマクサ

 硫黄岳と横岳の鞍部にある硫黄岳山荘で「コマクサ」を眺めながら休んでいた。
一人の山ひとが興奮気味に話しかけてきた。「白いコマクサを見つけた」と・・・・・。
この一帯はコマクサの大群生しているところで、この白色の大発見を誰かに伝えたかったようだ。
「兎に角、赤岳に向かって右側を見ながら行きなさい」とアドバイスを貰った。
言われた通り、注意深く探しながら進んでいった。
しばらくして、ピンク色の花を咲き競っている中で、一株だけ純白のコマクサを観つけた。
その存在は際立っていた。

八ヶ岳白色のコマクサ





                            

 



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Posted by nonio at 12:25 │Comments( 0 ) アルプスなど
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