2011年10月30日    狛坂磨崖仏を訪ねて

 一昨年、草津川の上流に位置する金勝山地を訪れた時のことである。上桐生の登山口から出発して、鶏冠山(とさかやま)~天狗岩を経て白石峰より下山した。谷筋を辿り、標高460m地点まで下っていった。少し広まった広場に出た。辺りには倒木が散乱していたが、「ふと」正面を見ると大きな斜面を利用した壁面に、仏像が彫り付けられていた。全く予備知識もない突然の出会いであった。

 人里から離れた奥深いところに「これは何だ」と立ち止まってしまった。何か惹き付けられる仏さんであった。異国風の感じをした顔立ちであった。

                   狛坂磨崖仏
狛坂磨崖仏を訪ねて

狛坂磨崖仏を訪ねて 表示板には、「たて約6メートル、よこ4.5メートルの花崗岩の磨崖面に三尊像を刻み出す。・・・・造像は渡来系工人によるもの考えられる」と書かれてある。写真クリック拡大 

 近江は、古代朝鮮半島からの渡来人が移り住み、様々な文化を伝えたと聞いている。百済や新羅の国々の人達が、山への信仰心と、仏教文化や石の文化、そして石を刻む技術を持ってやって来た。
 たまたま、滋賀県は良質の花崗岩が産出されるとこである。確かに、近江には「石」のつく地名や社寺が多い。石山、石部であり、石馬寺、石寺、奥石神社など・・・。 ここ湖南アルプス金勝山でも、巨石奇石の花崗岩がいたるところに露出している。
 この地を探し当てた工人が、望郷の念にかられて狛坂磨崖仏を彫り上げたのであろう。
詳しくは滋賀県観光情報狛坂磨崖仏を参照。

 その後,白洲正子著「かくれ里」並びにいかいゆり子著「近江のかくれ里」の近江の紀行文を読んでいる中で、この磨崖仏は、我が国でも第一級のものとされ、学術的に価値ある石仏であることを知った。完全な姿の本格的な磨崖仏としては、わが国最古(平安初期)のものらしい。

 白洲正子がこの磨崖仏に行くにあたって次のように記述している。
「近江の狛坂廃寺というところに、美しい磨崖仏があることを、私は二、三の友人から聞いていた。が、どの辺にあるのか、誰もはっきりとは教えてくれぬ。教えないのではなく、いえないらしい。それ程厄介な山奥にあるので、・・・・」。「かくれ里」は昭和46年新潮社から発行されているが、白洲正子がこの地に踏み入ったのは、更に昔である。道が途絶えて1回目は失敗していた。その後、発掘を手伝っている若い女性に案内してもらい、やっとの思いで、狛坂磨崖仏に辿り着いている。今では、多少行きやすくなっているが、それでも人が近づき難い、山中にある。

 この場所に行けない人のために、栗東歴史民俗博物館 <滋賀県栗東市小野223-8>. のホール正面に、複製品の狛坂磨崖仏が展示されている。場所は狛坂磨崖仏←クリック

狛坂磨崖仏を訪ねて

狛坂磨崖仏を訪ねて

 ここは、まだ誰も案内していない秘めたところである。磨崖仏に興味のある方を連れて行って、この素晴らしい如来さま・菩薩さまに会わせて、感動を味わってもらいたいと思っている。

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Posted by nonio at 17:44 │Comments( 2 ) 磨崖仏など石仏
この記事へのコメント
パルさん

ごむ沙汰しております。
そうです。予備知識なしに出会い、驚きもひとしおでした。
その内、私の知人を案内しょうと思っています。
Posted by noniononio at 2011年11月06日 17:01
偶然出会われたんですか~?
狛坂磨崖仏 昨年白洲正子展に合わせて金勝寺の
馬頭観音堂から入りました。
猪飼先生の講座もあったのですが、それには出られなくて惜しいことをしました。
Posted by パルパル at 2011年11月06日 16:39
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