2023年02月04日    「ねじりまんぽ」知っている

 京都の蹴上駅から、南禅寺・出町柳から鴨川まで行くことになった。
蹴上駅を降りたち、哲学の道を目指して歩きだした。
なんの変哲もない背の高さほどの短いトンネルを潜っていた時だった。

 建築に携わっていたSさんが、「 レンガが螺旋状にねじれているように見えませんか」と話しかけてきた。
私は、古ぼけたレンガ積みにしか見えなかった。怪訝だった。僅か20mほどのこのトンネルを通過したのは、今回が初めてではない。南禅寺に向かう時なども単なる歩行者用トンネルとして利用していたところだ。

更に「このトンネル、『ねじりまんぽ』と呼ばれている」と。返答に困ってしまった。これ日本語かと疑いたくなった。
「ねじり」とは、文字通り「ねじれている」ことらしい。「まんぽ」はトンネルのことを指すようだ。滋賀では天井川に何か所も「まんぽ」があると後で言っていた。

 いやいや、私は『ねじりまんぽ』という言葉であり、このトンネルに関する認識が甘かった・・・。

 『ねじりまんぽ』の上は、かつて大津~京都の船運ルートとして、台車に乗せた船が通されていたところらしい。要するに、琵琶湖疏水とこの地の高低差を補うために蹴上インクライン(傾斜鉄道)が敷設されたものである。現在、産業遺産として京都市の文化財に指定されている。

 さて、道路が、インクラインに対して斜めになっていたので、レンガと線路とが概ね直角になるように、レンガ積みがされていたのだ。
道路の内部から見るとアーチ部分の煉瓦が捻ったように見えるので、『ねじりまんぽ』と呼ばれているのであろう。

 ところで、インクラインと道路が直角に交差させれば、通常のアーチ構造でことが済むと思われるのだが、京都らしく、今まで使い慣れた道を変えることに躊躇したのであろうか。なぜ、複雑な『ねじりまんぽ』が施されたのであろう?
 煉瓦を削り出し整形して作り上げたこの構造物、当時の煉瓦職人達の気配りが、むしろ偲ばれた。

 何気なく発した「螺旋」と言う言葉から、思いもよらない明治に引き戻されてしまった。

「ねじりまんぽ」知っている

 「ねじりまんぽ」知っている終着点鴨川の河原で、熱々の“おでん”と“うどん”を肴にして、日本酒19度特別仕立ての「菊水」で、出来上がった。この日は、まったく新しい視点でみることができた満足な一日となった。

 その後、ここを通る機会があり、トンネルの入り口の高い位置に、篆書体であるが、「雄観奇想」と記されていた。改めて明治時代の心意気が感じられた。






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Posted by nonio at 10:24 │Comments( 2 ) 京都
この記事へのコメント
悠ちゃん

貴女のネジリマンポとは、偶然だね。
明治22年7月に開通した東海道線のトンネルもねじりマンポでしたか。

野外に行くときは、日本酒「菊水」と決めております。これ19度の美味しいお酒です。




 
Posted by noniononio at 2023年02月04日 18:11
nonioさん~
ネジリマンポ・・・御覧になったのですね~~~   面白いですが、昔の人は
煉瓦で此の円弧を描き、更に強度の事も考えて 此の様な形状に設計したんだと思われます。

悠ちゃんも 先日正に 此の滋賀県のネジリマンポをアップしたのですが、御覧頂けているでしょうか???

それにしても 河畔での熱燗! 美味しかった事でしょう!
Posted by 悠ちゃん4悠ちゃん4 at 2023年02月04日 10:56
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