2013年06月04日    シャクナゲの咲く堂満岳・金糞峠

 5月13日、堂満岳東稜道を登り、下山を金糞峠から青ガレを下山する『YASUほほえみクラブ』が主催する第24回里山ウォークに参加した。私の友人がサブリーダを務めるというので顔を出してみた。コースはイン谷口~ノタノホリ~堂満岳~金糞峠~青ガレ~イン谷口。

 何より、参加したくなったことは、青ガレを通過するというのである。

 昭和35年当時、武奈ガ岳を目指すには 金糞峠を詰め八雲ガ原のコースが通常コースであった。浜大津から江若鉄道に乗り込み比良駅へ。北比良峠山頂駅までの比良ロープウェイもなかった時代である。布製の重たいテントも担ぎ、イン谷から青ガレのゴロゴロしたガレ場を通過して突き上げる金糞峠へ夕方やっとたどり着いたことがあった。私にとっては初めての本格的な登山で金糞峠の名前はいつまでも心に刻まれた峠であった。

 その後「青ガレ」は、堆積した斜面に落石が起こり、死傷者が発生。金糞峠にこの立て看板が立てられた。「この先、金糞峠から大山口間(通称青ガレ)付近において落石土砂崩れが起こりやすくなっており危険ですので別ルートへ迂回なさるようにお願いします。比良山遭難防止対策協議会」
青ガレルートは利用してはいけないものと思い、永らく避けて、もっぱらダケ道を使っていた。が、懐かしい”青ガレ”を通過したくなった。

金糞峠の立て看板
シャクナゲの咲く堂満岳・金糞峠 
 比良駅から出発して、平坦な道路を数キロ歩き、既に形だけの別荘地前を通過し、登山路を登っていくと「ノタノホリ」にやってきた。いつ来ても、水が涸れることがなく、神秘に満ちたところで、一休みに丁度よいところである。ここにはモリアオガエルが生息しているが、まだ時期が早いのであろう木々の枝先に白い泡状の卵が見られなかった。
ノタノホリは比良山系で最も大きい池
シャクナゲの咲く堂満岳・金糞峠
 堂満岳頂上近くになって、華やかな色合いが見え隠れしてきた。シャクナゲの群落するところに来たようだ。つぼみは真っ赤であるが、開花すると淡いピンクの花であった。この種類はホンシャクナゲで、滋賀県の花である。今ではシャクナゲを保護するため、登山路も整備されているが、 35年当時、比良の尾根を背にした縦走路には、いたるところにシャクナゲ木が繁茂していた。この枝が幾重にも倒れかかり行く手を阻まれ、難儀したことが懐かしい。
滋賀県花のホンシャクナゲ
シャクナゲの咲く堂満岳・金糞峠
 東稜道の最後の登りは、疲労も増し辛い。やっとの思いで堂満岳の頂上に至った。
堂満岳の頂上
シャクナゲの咲く堂満岳・金糞峠
 今は、30名近くの参加者で金糞峠は人であふれ返っていた。50年前のこの場所は、限られた人が踏み入れたところであった。この峠の僻地から、眼下に広がる素晴らしい琵琶湖を独り占めしていた自分を思い出していた。
金糞峠から青ガレへ
シャクナゲの咲く堂満岳・金糞峠
 青ガレは下山時確かに注意が必要だが、踏み固められ浮石も少なく、それほど問題もなく通過できた。だが、危険の立て看板がある以上、自己責任で通ることだ。この日も、シャクナゲを目当てに来ていたグループは、青ガレを避け、北比良峠からダケ道を通って下山していった。
累々と花崗岩が堆積している青ガレ一帯

眼下の琵琶湖を望む
シャクナゲの咲く堂満岳・金糞峠

      
 


シャクナゲの咲く堂満岳・金糞峠 比良山系で最高峰の武奈ガ岳・スキー場のある蓬莱山の山名は世間で知られているが、堂満岳(1057m)と言えば、山に興味を持っている人達に限られるようだ。この山は、比良山地の稜線が琵琶湖寄りに張り出したところにあり 、JR比良駅から眺めた山容は美しい三角錐をしており際立っている。
 井上靖の短編小説『比良のシャクナゲ』の中で比良山系の一番神々しく見えるところは堅田であるとして、ここから見た比良の描写がある。「座敷から眺める比良は美しい、・・・・・彫りの深い数条の渓谷をゆったりと抱き、裾広く湖西に足を踏んまえ、山頂の一部を雲にかくしてることの多い姿は、他の駄山〈だやま〉に見られぬ気稟と風格を持っている。たしかに、美しい。」と語られているが、堂満岳をイメージされているのではないかと思っている。


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Posted by nonio at 17:46 │Comments( 0 ) 滋賀県の山
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