2010年03月28日    滋賀の春を呼ぶ比良の八講

  近江では、3月になると寒気がぶりかえし、強い北西風が吹き荒れることは誰もが知っている。丹波高地から比良連峰を通り抜け、急斜面を駆け下ってくる強風。何時しか、人々は長い冬の終わりを待ちわびる気持ちを、「比良の八荒、荒れ仕舞い」と言う言葉に託した。

 「比良八講」と言う言葉があったが、いくら考えてもこの””は””であろうと思っていた。ところで、毎年3月26日、比良にあった天台宗の寺院で、法華八講とよばれる法要が営まれていた。この法要の時期が、天候が荒れる時期と重なっていたことから比良八講と呼ばれるようになったことを最近知った。僧侶や修験者が湖上に繰り出し、古典行事が行われていたのである。

 この巡行に参加するため、レイカの仲間が浜大津港に集まった。山伏、僧侶、振袖姿の稚児娘達の一行が一列になって、ほら貝を吹きながら練り歩いてきた。乗船口近くで桟橋法要を行った後、この一行と大勢の参拝者が、観光船ビアンカに乗り込んだ。
 直ぐに船内の2箇所で法要が行われた。参列されている方々は、肩から”比良八講”を書かれた袈裟を掛け、数珠を持ち正装で参加されていた。坊さんの読経が始まると、その読経に 合わせて皆が合唱し始めた。 ...

 小生、余りにも場違いにいることを悟り、船上の甲板に出て行った。陽が射していたが結構寒かった。それでも2~3時間ほどデッキから比良山などを眺めていた。何時もは、山から琵琶湖を眺めていたが、今日は、湖から山ひだをじっくり眺めることができた。見方の方向が全く反対になっただけだが、真新しい光景が現れ、興味が尽きなかった。

 滋賀の春を呼ぶ比良の八講 出港間際では、比叡山の頂上まで見えていたが、ガスが山にかかったと思った瞬間、山は雲に覆われていった。天気の移り変わりがつぶさに、見られ飽きることなく眺めていた。「やはり、今日は、まだ荒れ仕舞いの仕上げの最中なのであろう」と自分で自分を納得させていた。

 前日まで天気が荒れ気味であったので、薄っすらと白化粧をした比良山系になっていた。それぞれの谷間には、まとい付くように雲が流れ込んでいた。いくら雲に山並みを隠されていても、それぞれの谷あいの姿からそれぞれの山名はそれとなく判った。

滋賀の春を呼ぶ比良の八講

滋賀の春を呼ぶ比良の八講 船の進行方向右舷には、湖上に浮かぶようになった三上山が見えた。ここからは、女岳が男岳の後に隠れていい容である。裾野が対称でなく、右裾を少し引っ張ってところが実によい。

 低山ながら「近江富士」とも呼ばれる三上山は、右後に相棒の菩提寺山を連れ添っていた。この山の山容からして、湖東平野に湖上を進む船人たちの目印になっていたようだ。

 急に賑やかになったので、振り向くと、紙塔婆を流して水難者の霊を慰め、「法水」を湖面に注ぎ湖水の浄化の祈願などが行われていた。
そうこうしていると、ビアンカ船は近江舞子の桟橋にやってきた。ここで全員が下船。

滋賀の春を呼ぶ比良の八講滋賀の春を呼ぶ比良の八講

  稚児娘さんたちは、写真のように手に手にぼんぼりを持って練り歩いた。 これは昔話で、修行僧に恋をした娘さんが、燈火を目指して”たらい船”を漕ぎ出した。満願の百日目に沖に出たところ、灯火がく、”たらい船”は湖に沈み、恋が成就できなかった言い伝えを再現されている。この比良八講に参加した稚児娘さんは良縁に恵まれるといわれている。

滋賀の春を呼ぶ比良の八講 
 
滋賀の春を呼ぶ比良の八講 雄松崎湖畔にて、古式に則り「比良八講法要の護摩焚き」が山伏達の手によって執り行われた。点火されるまで、4ツの隅に弓を射る所作など数々の定められ作法があるようだ。

 いよいよ大きく盛り上げられた杉の護摩壇に火がつけられた。瞬く間に白煙が立ち上がり、折からの風に煽られて四方八方に向きを変えた。風向きにより『大阿闍梨』さまにも襲っていったが、泰然自若とされていた。さすが、比叡山延暦寺の千日回峰行を2度満行した行者として知られている天台宗大阿闍梨、酒井さんであった。燃え盛る火の中に護摩木、供養を書き記した札が次々に読誦しながら火の中に投げ入れられた。

 最後に大阿闍梨さんから頭の上にお加持を受け、伝統ある「比良八講」も無事に終了した。
終了後、土砂降りの雨となった。『比良八荒、荒れ仕舞い』といわれたのだが…。



 



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Posted by nonio at 18:04 │Comments( 1 ) ウォーク
この記事へのコメント
こんばんは!
三寒四温どころか七寒ニ温の様な3月でした!! いよいよ春本番~♪
伝統行事に参加され、
大阿闇梨さんのお加持を頂き良い経験されましたね。
Posted by パルパル at 2010年04月01日 22:06
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