2010年04月03日 ミステリーゾーン裏京都散策
余りも目新しい場所に訪れた時には、記述を遅らせている。なぜなら、頭の中にはいろんな映像が混沌として記憶している。時間が少し経つと浄化され、印象深いことだけが甦るのでそうしている。
先日、京都の八坂神社から東福寺・泉涌寺へと南下するコースを最近親しくなった4人で散策した。京都検定2級を持っているT氏・M女史、もう一人は子供の頃から京都で育ったT氏に案内してもらった。
今回は、「京の魅力探訪ウォーク」で、特別公開される「涅槃図」を鑑賞することがきっかけで話が進み、地のヒトでしか知らない場所、法観寺(八坂の塔)・安井金比羅宮・六道珍皇寺・耳塚・方広寺なども案内すると言うので後について行った。
まず、訪れたのは清水寺の近隣に位置する法観寺である。ここは、京都を代表する情景である。こういっても法観寺と云えば、京都人でも分かり難い。言葉を換えて、八坂の塔(地図)と云えば誰もが知っている。

八坂は坂が多いという地形から生まれた言葉なのだろう、五重塔がみえる石畳のゆるやかな坂道になっていた。路の両側には、雑多の商店街が並んでいたが、なぜか苦にならない。着慣れた着物姿が良く似合う町並みだ。着こなしを楽しむような所作をした3人の姿には、柔らかさや風情が情景に馴染み街全体を華やかにした。本物の舞妓・芸妓さんには出くわさなかったが、観光客の舞妓姿を目にした。
以前、この近くで舞妓さんに変身したヒトを思い出し、その話をした。
「一台目の人力車には、二十歳そこそこの女性が舞妓さん姿で車夫に引かれていった。その後に、どう見ても70歳を超えた母親と思う方が、同様に白粉で化粧した舞妓さん姿であった。変身できたかのように澄ました顔をして人力車で揺られていた」続けて、「どうみても、どう考えても似合わない。むしろ異様な感じであった」この情景をM女史に語った。「女の人にとって、いくら年をとっても心は、乙女のようなの。だから舞妓姿になってみたくなるの…」
ここ京都は、予想だにしないことをやってみたくなる雰囲気を醸し出している選ばれた場所のようだ。
目の前に八坂の塔が迫ってくるように建っていた。見上げると八坂の塔は大きい。

次に訪れたのは、異様な雰囲気が漂う縁切り・縁結びの安井金毘羅宮(地図)である。京都は古都であり、長い歴史を経る内に、人間のどんな欲望をもかなえてくれるようになってきた。
M女史はここに連れてきたかったようだ。「ここ数年、縁切りに霊験あらたかな神社として口コミで話題になり、男女の縁から始まって、浮気、病気、ギャンブル、など「縁切り」の御利益がある神社として知られているの」と話していた。

東大路を四条に向って歩いて行くと東山安井辺りに鳥居があった。そこに「縁結び祈願・縁切り祈願」と大きく書かれた垂れ幕が横向きに取り付けてあった。何かいかがわしさを漂うところである。進んでいくとラブホテルが寄進した行燈(あんどん)があり、祇園花街に近いところだ。
何人かの若い女の子がカマクラ付近にたむろしていた。こんもりとした石とは分からないほどお札が貼り付けられていた。異様な光景である。拝殿に向かって左手にある「縁切り縁結びの石」には、真ん中を貫通した穴がくられていた。頻りに、女性が這いつくばってこの穴を通っていた。
M女史に「何をしているの」と尋ねると、「手前から向こうへ行くヒトは縁を切りたいヒト、縁結びを願う人は向こうからこちらの方へ来るヒトです」更に「その後、お札(100円)に願い事を書いて石に貼れば、心願成就するのだそうです」と話していた。
それだけのことか…と思っていたが、絵馬が吊られている箇所にきて仰天した。
酷いのになると「夫と浮気相手との縁を切って下さい」といった事から、愛人が「夫婦が別れ、彼の妻が死ぬように」など呪い、妬み、が書き綴られ、まともに目を通すのもはばかる内容であった。それも、これ以上吊るすところがないほど重ねられていた。男性の願いは、ギャンブル・禁煙など他愛ないものだ。ところが、女性の呪いは、真に恐ろしい。願い事を書いた身代わりのおふだに託して、一途に願っているようだ。愛憎が渦巻く情念の神社であった。
誰かが、「ここに妻が来たいといえば相当覚悟が必要だなー」と冗談とも本音ともとれる言い方した。 ここに踏み留まっていると話が益々もつれてくるので、早々に退散することにした。

一袋500円で、ラベルに由来が書かれていた。『今は昔、武士が身重の妻をなくし葬った。ところが数日を経て土中に幼児の泣き声が聞こえるので掘り返してみると、亡くなった妻が土中で産んだ児であった。当時夜な夜な付近のこの店に飴を買いに来る婦人がいたが、赤ん坊を掘り出した後は、ピタリと来なくなった。人々は、亡くなった妻が幽霊になって毎夜この飴を買い、赤ん坊に与えて育てていたのだとうわさした。誰いうとなくその飴を、幽霊子育ての飴…』と。
麦芽糖でつくった琥珀色した昔懐かしい”水あめ”の味がした。いずれにしてもこのネーミング飴には驚き入る。
向かったのはあの世の入口六道珍皇寺(ろくどうちんのうじ)であった。
京都で育ったT氏は「ヒトが死ぬと善悪の行いによって地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間・天上の六世界に生まれ変わる輪廻転生など…」を丁寧に解説してくれた。

昔、「六道の辻」より東側は都の外であり、あの世とされていた。
本堂右手にある井戸は、小野篁(おののたかむら)が冥土行きに使ったとされる冥土通いの井戸があった。
彼は、昼間は朝廷で働き、夜になると閻魔大王に仕えるため、この井戸を使用していたと言われている。
ここは、魑魅魍魎が跋扈(ばっこ)する古都のミステリーゾーンであるが、あまり妖気も感じられない。むしろ安井金毘羅宮には怨念が渦巻いて背筋が寒く感じた。
豊臣の滅亡を招いた方広寺、秀吉がまつられている豊国神社に向かった。途中、秀吉が朝鮮に出兵の際、敵兵の耳、鼻を持ち帰った。耳塚に訪れた。ハングル文字でも解説されていたが、韓国の人達がどう思ったことか…。
寺豊国神社の北側にある方広寺の鐘楼と鐘にやってきた。

後で分かったのだが、ここには豊臣家滅亡のきっかけとなった『国家安康』(こっかあんこう)『君臣豊楽 子孫殷昌』(くんしんほうらく しそんいんしょう)の2ツの呪いの碑文を探していたのだ。
『国家安康』この鐘銘に呪いが込められていると言うのである。これは家康の”家”と”康”に間をつくり、家康家の分裂を願うものである。『君臣豊楽』は豊臣を君主とし、豊臣家の反映を願っている。徳川家を冒瀆するものと言いがかりをつけた。その結果、大坂の陣の直接の引き金の事件となったものである。
さすがの秀頼もこれには激怒。もはや戦は避けられないと戦いを挑んだが、大坂城落城。豊臣家は滅亡した。知略、謀略、戦略に長けた老獪な武将に、若い秀頼は翻弄された。京都には、このような怨み重なる痕跡も今も残されている。京都を古都と呼ばれる所以である。
更に、JR東海道線を渡り、「京の魅力探訪ウォーク」が開催する涅槃図鑑賞に参加するため、JR東福寺駅の近くの瀧尾神社集合場所にやってきた。東福寺・泉涌寺(地図)。
今まで、次から次と繰り出される京都の強烈な裏箇所を訪れてきた。ここ東福寺の臥雲橋から通天橋を眺めて、やっと京都らしい京都の風景にありつき、ほっとした。

ここには、渓谷があり、西から東へ臥雲橋、通天橋、偃月橋(えんげつきょう)という3本の橋が架かっている。中でも臥雲橋から通天橋をながめる景色が最高である。紅葉の名所として知られている。
本堂に掲げられた涅槃図は、縦約12メートル横約6メートル巨大な絵図に、思わず手を合わせ、見見入ってしまった。お釈迦さんが、人間としての生を全うしようとするその直前直後の様子を描いたものである。室町時代の画僧、明兆が描いた作品で、一般的な涅槃図では描かれない猫がいるのが特徴という。この話も仲間はよく知っていて猫とネズミの逸話を話してくれた。泉涌寺(東山区)でも、日本最大といわれる縦約16メートル、横約8メートルの涅槃図が公開されていた。
印象深く思ったのは、美しい楊貴妃観音像であった。M女史は、玄宗皇帝と楊貴妃の話を語ってくれた。殆ど中身は忘れてしまったが、息子の嫁楊貴妃を奪った事だけ覚えていた。
小生、京都については表面的な点と線しか知らないので、素朴な質問を繰り返した。でも懇切丁寧に答えてもらい満足した1日となった。
京都のたった一本の線を辿っただけであるが、観光客が行き交う華やかなところから、ラブホテル近くにある恐ろしい縁切り神社、平安時代あの世への入口、陰謀が渦巻く方広寺の鐘。
途中、塩小路通りを横切る時、高齢者介護センターの2階のピンク映画館。けばけばしいポスターに哀愁と独特のいかがわしさと猥雑さがミックスしていた。インターネットでいくらでも配信されるこの時世、誰が見に行くのか。そして最後に涅槃図。いく層にも重なり合った歴史を持つごった煮の古都であった。
今回、京都見物は、ガイドブックを片手に確認するだけの旅ではなかった。今まで味わったこともない、息づく生の街を歩くことが出来た。誰が言ったのか忘れたが、京都は「一見さんお断り」と言った閉鎖的な街であるが、一度打ち解けると大事にしてくれる。つまり、歴史ある襞、影、深さを持つ京都を知るには、この地を知るヒトたちと縁を持つことだ。
Posted by
nonio
at
20:36
│Comments(
1
) │
ウォーク
この記事へのコメント
よく知ってる方でないと裏京都は案内出来ませんが、楽しまれた事と思います^^
涅槃図観賞は良かったですね!!
舞妓姿にはこの私も憧れてます~^^;でも どうらんが皺にめり込み、もう無理です。
芸事が好きなので、生まれ変わったら舞妓さんになりたいと、よく云っています(^^;)))
涅槃図観賞は良かったですね!!
舞妓姿にはこの私も憧れてます~^^;でも どうらんが皺にめり込み、もう無理です。
芸事が好きなので、生まれ変わったら舞妓さんになりたいと、よく云っています(^^;)))
Posted by パル
at 2010年04月04日 21:47

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