2009年11月13日    イチゴ谷山・経ヶ岳・三国岳の山々の自然と暮らし

 実直で頑強な山仲間S氏からイチゴ谷山に行こうと誘いがあり、10月中頃から11月上旬にかけて、この山周辺に、続けて3回出かけて行った。
 この山は滋賀県最西端に位置し、西は京都府、北は福井県に接する付近にあり、高島トレイル最終地点三国岳から、経ヶ岳・イチゴ谷山へと900mそこそこの尾根続きになっている。
 経ヶ岳まで足を延ばす人はいるが、イチゴ谷山まで行く人は稀である。イチゴ谷山の登山口平良(へら)は、京都府京都市から福井県三方上中郡若狭町に至る国道367号から安曇川を渡り、県道783号の麻生古屋梅ノ木線に入り、針畑川を遡る山深いところである。  地図平良
             平良集会所
 イチゴ谷山・経ヶ岳・三国岳の山々の自然と暮らし
 第一回目は、健脚4人でイチゴ谷山・経ケ岳・三国岳を目指した。平良集会所に自動車を駐車させ、平良分校まで戻って、オキナ谷の手前から作業道を伝ってイチゴ谷山に向かった。
 各自コンパスを目指す尾根にセットして、動物よけの扉を開けて入山した。はじめは作業道であったが、直ぐに踏み跡もなくなった。無論、テープもなくGPSで現在位置を確認しながら進んだ。谷に入らず尾根筋を求めて直登し、イチゴ谷山に通じる尾根に這い上がった。そこからは僅かな踏み跡を辿りイチゴ谷山頂上(892m)に達した。
 
 一休みしていると雨雲となり、通り雨になってきたので先を急いだ。ずり落ちた鹿除けのネットの横を辿っていくと、既に雨も止み、見事な三角錐の経ケ岳(889m)が見え始めた。だが、そこに達するルート探しで30分以上ロスとなった。この辺りは、細々と続く踏跡を辿ることになった。なお、藪はそれほど気にするほど深くなかったが、尾根幅が広くなり行き先が不明瞭となって、迷ってしまった。

 経ケ岳までくると稜線沿いの山道もはっきりしてきた。この「経」が付く山は、日本中の山に多く見かけられ、多分、この頂上付近に経典を埋めた事から付けられた山名だと思う。三国山(959m)までは、一本道の尾根縦走となった。さらに、三国山から朽木桑原に下山して平良集会所まで戻ってきた。

イチゴ谷山頂上         経ケ岳頂上         三国岳頂上
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               鯖街道峠茶屋跡 
イチゴ谷山・経ヶ岳・三国岳の山々の自然と暮らし 第二回目は、桑原橋を渡って、お墓の前を通り抜け、丹波越えの道を辿った。急な登りが始まった途端に、踏み跡を見失ったが、直ぐに尾根上のルートに戻っていくと正規の道に出た。稜線に出る手前で「鯖街道峠茶屋跡」と書かれた札が、僅かな広場の前にぶら下がっていた。
 「近江百山」の西澤明によれば、「私の先祖が茶店を営んでいた。峠の直下に水が湧き出すところがあり、茶屋が設けられていたといわている。その昔、鯖街道として使われていた山岳街道で、鯖街道の元祖らしい。桑原から能見峠を越え花背・鞍馬・京都へ続いている…」との記述を思い出した。近江の山には、人々の生活と繋がりを持った古道が数多くあるが、とりわけこんな奥深いところでも、生活をしていた痕跡が残っていることに驚いた。

 ここ登り越えると峠状の鞍部に出た。御林谷(おはやしたに)峠とも呼ばれ、経ケ岳1.2km三国岳1.9km桑原橋2.5kmの3方を示した真新しい道標があった。ここから久多側に真っ直ぐ下ることが出来ないようだ。稜線に沿ってどちらにいって峠越えしなければならない。少し変わった峠であった。
 
ここからピストンで経ケ岳を目指し、再び三国岳に向かった。
              桑原に建つ農家の屋根に雪          
イチゴ谷山・経ヶ岳・三国岳の山々の自然と暮らし
 第三回目、桑原に訪れると、11月3日であるのに、民家の屋根には、既に白い雪が積もっていた。急勾配の屋根を見ただけでも豪雪地帯と分かったが、やはりここは、厳しい自然が待ち構えているところであることを肌で感じとれた。

イチゴ谷山・経ヶ岳・三国岳の山並みの縦走路には、鬱蒼と茂った木々が手付かずのまま残されていた。                              苔むした木に「きのこ」
    
イチゴ谷山・経ヶ岳・三国岳の山々の自然と暮らし
 陽光の差さ込まない木々は苔むし、「きのこ」が生えていた。第一回目のときは、立ち枯れる木に「なめたけ」が群生しているのを見つけたが、写真を撮らなかった。今回は、とりあえず写真に「きのこ」を収めた。
 後日、「きのこ」に詳しい友達に尋ねると「たぶん、ヒラタケと思われます。確信度70%。足の付け根が、分からなかったので 毒茸のツキヨタケの可能性が15%程あります。ムキタケ(食茸)の可能性も10%あります。観察のためのキノコ写真は、背側、腹側、足の全体の写真がないと同定が難しいです」とのことであった。
 彼は、「きのこ」を採ってくるとまず少し口にする。様子をみるためである。2~3日嘔吐、腹痛、下痢など何もなければ食べだすと言っていた。無論、何冊もの「きのこ」の図鑑で複数確認をするとのこと。ところで、小生、野生の「きのこ」に関心があるが、やはり食べたことがないし、食べる勇気もない。

                  枯れかかった巨木 
イチゴ谷山・経ヶ岳・三国岳の山々の自然と暮らし
 経ケ岳と御林谷峠の間に、多分アシュウ杉と思われる大木が、落雷も受けているのであろう、立ち枯れていた。よく観察すると、根元に近いところで一本の枝に若葉が甦っていた。この樹木の本体は、殆どが死に絶えているが、僅かに一本の枝に生命を繋いでいた。植物の底知れぬ力強さを見せ付けられ、命の尊さをあらためて感じとった。

 平良は、人間より動物の方が多い村とも言われ、村外れには、クマ用と思われる大型の獣用の檻が設置してあった。また、獣よけの音が平良村を守るように周期的に音がして、谷あいにこだましていた。多分、カーバイトを使って一定間隔でドーンという音が鳴り響く、爆音器が備え付けてあるのであろう。この辺りは、クマの生息域でもある。
       
              クマ用と思われる大型檻
 イチゴ谷山・経ヶ岳・三国岳の山々の自然と暮らしまた、高島トレイル終点地山の菜摘み農園「じゅうべえ」のお上さんは、最近「しか」が増えすぎ、笹の若葉を食べ尽くされ、笹が枯れ始め、植物の生態系が変わって来たと話していた。我々も縦走路の脇の笹が、かなりの範囲で立ち枯れていたことを確認している。いずれにしても、 この一帯では、鹿、いのしし、熊、きつね、渡り鳥やら、とんび等などの関わりを持った昔ながらの暮らしがあった。       木材の切り出し用大型ヘリ
イチゴ谷山・経ヶ岳・三国岳の山々の自然と暮らし 
 辺りが暗くなってきた針畑川沿いの県道783号の麻生古屋梅ノ木線を下山してくると、突然、大型ヘリが轟音をたてながらこの道路の真上に現れた。木材の切り出し作業をしていた。
 ある山の頂きにヘリがいっては、戻ってきた。また新たな山並みに消えていったと思うと戻ってきた。あっちこっちで伐採した木材を回収作業していたようだ。ロープに吊るされた木材は直径1mもある巨木だけであった。
 道路を一時閉鎖している作業者に聞くと、「細い木材では採算が合わないが、このぐらいの木材であれば、何とかなる」と言っていた。

 後日、地のおばさんと話をした時、「昔は、木を伐採してトラック一杯運び出すと、1ケ月は食べられたが、今では、トラックの運賃代出しか買い上げてくれないので、木材では生計が立たない」と言っていた。 現在では、林業で食べていけない時代になったようだ。植林された木々が、放置され、巨木のみ搬出されている現状を垣間見た。
       日没間際の一時集積場へ大木の降ろし作業

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Posted by nonio at 12:08 │Comments( 1 ) 高島トレイル
この記事へのコメント
nonioさん、こんにちは
イチゴ谷山は登って見たい山ですが、最近足を痛めて山登りもご無沙汰しています
機会が有れば行ってみたいと思います
横山岳も随分遠ざかっていますが
ーやま桃ー
Posted by 岳友会BLOG事務局岳友会BLOG事務局 at 2009年11月25日 07:25
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