2009年09月04日    滋賀に地震が来るの(琵琶湖西岸の地震発生確率)

 8月下旬、讀賣新聞の片隅に次のような記事があった。「滋賀県西部を走る活断層「琵琶湖西岸断層帯」が今後30年以内に地震を起こす確率について、政府の地震調査委員会は8月27日、北部(23km)で最大3%、南部はほぼ0%とする見解を発表した。2003年に『最大9%』と発表したが、新たな地質調査などを踏まえて見直した。30年確率が3%以上の活断層は『活動が高い』とされ、調査委は『危険度が高いことに変わりはなく、依然として警戒が必要』としている」と記載されていた。

 さて、この記事を見て理解できるだろうか。地震の確率が示されているがどの程度の確かさでくるのか、さっぱり分からない。数値が発表されて余計に混乱しそうだ。
地震調査委員と言う組織は、断層とは、琵琶湖西岸の場所は、……次から次とわからない。いずれにしても気になる記事であるので、”そもそも論”から調べることにした。

地震調査委員の設定並びに全国主要98断層帯の公表などの経緯
 話は遡るが、1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災は、6,434名の死者を出し、10万棟を超える建物が全壊するという戦後最大の被害を蒙った。この地震が引き起こした原因は、既に分かっていた活断層(淡路島北部の野島断層とその地下の北東延長部)の活動によって起こったことがわかり、これをきっかけとして、活断層は地震予知に有効と考えられ、より一層注目され出した。

 この教訓を踏まえ、早速同年7月、「地震防災対策特別措置法」が制定され、地震に関する調査研究を政府として一元的に推進する地震調査研究推進本部が設置された。学識経験者などで構成された地震調査委員会は、今後30年以内に震度6弱以上の地震が発生する長期的な確率の評価が公表された。全国主要98断層帯について調べられ、そのうち28の断層が地震発生の確率が高いことが示された。この中で、2003年、琵琶湖西岸断層帯の地震発生確率は、0.09%~9%と予測され、全国で7番目に地震が起こる可能性の高い箇所と判断された。そして、今回、その見直しが発表されたものです。

では活断層と地震メカニズム
 活断層の定義は、「新生代第4世紀に繰り返し活動し、今後活動する可能性があるとみなされる断層」と記されています。つまり、約100万年前より新しい時代に動いた形跡のある断層を活断層と呼んでいます。この活断層は、今までに、同じところで繰り返し”動き”大地震を起こしてきた。活断層の”活”と言うことからしていつでも活発に活動しているように思われますが、その逆で、静かなのです。日常では、活断層が生きていることを実感できませんが、一瞬、動く時が、地震なのです。
 
 地震をひき起こすメカニズムは、次のようです。
 ご存知のように日本列島周辺では、プレート同士が押し合いをしていますが、このプレートの押し合いが琵琶湖の内陸までに伝わり、この押し合いの力が活断層に「ひずみ」となってエネルギーを溜め込まれて行きます。長い年月をかけてどんどん「ひずみ」がたまってくると岩盤が耐えきれなくなり限界に来ると岩盤が破壊してしまい、破断面にズレが生じ地震を発生するのです。地震により一挙に「ひずみ」エネルギーを放出してしまうのです。

 これを繰り返した傷跡が、活断層として残っているのです。問題は、マグニチュード5とか6の地震では、割れ目が地表まで顔を出さないのです。つまり、地表で確認されている活断層は、マグニチュード7クラスの大地震が起こった傷跡なのです。阪神・淡路大震災で経験した大地震となり、我々に襲ってくるのです。活断層は、今日も着々と地震のエネルギーを溜め込んでいるのです。

確率モデル
 足元に潜んでいる活断層は、何時動くのかこれが分かれば地震に備えるができるのです。それを知るためには、「平均して何年間隔で大地震を起こしてきたか」(平均活動間隔)と「最近の活動時期はいつだったか」の2ツを知る必要があります。断層を掘って、地震の痕跡などの年代測定や、古文書の記録から割り出されています。

 活断層はある程度同じ規模の地震を一定の間隔で繰り返しています。このため、次の活動のタイミングに近づけば発生確率が高まります。しかし、同じ間隔と言っても、「ばらつき」ます。 完全に確率が100%であれば周期どおりに発生するのですが、実際には、不規則となり「ばらつき」ます。このことを確率モデル(BPT分布)に近似して30年間の地震発生確率を計算されたものです。

 地震発生確率は,地震発生間隔がBPT(Brownian Passage Time)分布に従うとして求められます。BPT分布とは,応力の蓄積過程に不規則性を考慮し,応力の蓄積がある値に達したときに地震が発生するというモデルに対応しており,この都合の良い統計学の分布を活用されています。同分布は,活断層で起こる地震の平均活動間隔と活動間隔のばらつきによって計算できます。

地震発生確率
 500~3000年に1回くらいの割合で動くという調査結果があります。この地震がやってくる周期が我々一生涯を超えるスパンですので、大丈夫と考えがちになるのですが、どうなんでしょう…。

 将来を占う予言者では、何年何月何日に地震が起こると言い切るでしょう。いずれ、数々の科学的根拠を示して地震を予測することが出来る時代がやって来るかも知れませんが、現在では、不確定な要素を現す方法として確率を用いて「XX断層では今後30年以内にXX%の確率でXXの地震が発生する」と言った予測がされています。

 ここで30年が設定されました。活断層の活動間隔は、幅が広く1000年に一回、いや10000年に一回起こることもあります。そんな長い期間については、我々にとって遠い話で、安全と思ってしまいます。今後30年間に地震がやってくるのかどうかになると、少しは気にしなければなりません。ことから設定されたものです。
 地震発生確率に30年を考慮するとなると、地震発生確率は高くなってきます。1000年に一回の地震は、文字通り千分の一になります。30年の確率で考えるとは、単純計算で百分の三となります。

 では、「この確率の数値3%、9%とはどの位の水準なのか…」全く検討がつかないのですが、例えば確率0%は、30年間で滅多に地震が起こらないことを示しています。また、確率100%になれば必ず発生することが理解できます。
 そこで、この確率と日常起こる確率指標と比較してみましょう。道路交通事故での死亡する30年間の確率は約0.2%、負傷する確率は約20%。犯罪に巻き込まれて死亡する30年間の確率は約0.03%、負傷する確率は約0.7%と言われています。このことからすると、3%・9%はかなり高水準であることが理解できました。

 琵琶湖西岸断層帯による地震は、かなり高い確率で発生するものであると認識できました。

琵琶湖西岸断層帯
 まず、この琵琶湖西岸断層帯は、どこにあるのか。→琵琶湖西岸断層帯
 小生、比良山系にはよく出かけるので、この辺りの地形は分かっているつもりです。比良山系は、琵琶湖西岸を南北に25kmに渡って連なり、武奈ヶ岳や蓬莱山といった1000メートルを越す山が15座もあります。東側の岩質は、花崗岩で風化が激しく、急崖やガレが多い。また山麓には扇状地や天井川も多く、砂防ダムがたくさん造られています。つまり、琵琶湖に面した東斜面は、急激に立ちあがっている地形です。琵琶湖西岸断層帯とは、比良山系裾野に沿って、滋賀県大津市から高島市マキノに至る長さ59kmの断層帯です。

 因みに、比良山系の後ろには、鯖街道があります。昔、若狭湾で捕れた鯖を京都に運んだ道路は、正に、断層が造った街道なのです。この三方・花折断層帯は、三方断層帯と花折断層帯からなり、琵琶湖西岸断層帯に平行して走っています。三方断層帯は、全長約26km花折断層帯は、高島市今津から京都市を経て宇治市にいたっています。このように比良山系周辺は、活断層が入り組んでいるところなのです。

今回の見直し
 政府の地震調査委員会(事務局・文部科学省)は29日までに、2003年に公表した滋賀県内の琵琶湖西岸断層帯の長期評価を、現地調査に基づき一部改訂しました。ほぼ南北に延びる同断層帯を、北部の約23キロ(高島市)と南部の約38キロ(高島市南方から大津市国分付近)に分けられました。
 南部については、最新活動時期が1185年と判明し、今後30年以内の地震発生確率をほぼ0%と推定。しかし、北部は最新活動時期を約2800~2400年前としか絞り込めず、確率論の数式に基づき1~3%としたものです。

「備えあれば憂いなし」と申しますから、琵琶湖西岸断層帯を震源とした地震想定を参考に

参考資料 いま活断層が危ない 「名古屋大学地震火山・防災研究センター」 活動期に入った地震列島「尾池和夫」活断層大地震に備える「鈴木康弘」 足元に活断層「金折裕司」など

[地震調査委員会] ブログ村キーワード


 琵琶湖西岸断層帯は、滋賀県高島郡マキノ町から大津市に至る断層帯である。全体として長さは約59kmで、北北東-南南西方向に延びており、断層の西側が東側に対して相対的に隆起する逆断層である。
断層帯の過去の活動
 琵琶湖西岸断層帯の平均的な上下方向のずれの速度は、概ね1.1-1.6m/千年程度であった可能性がある。本断層帯は平均して、約1千9百-4千5百年の間隔で活動した可能性がある。最新活動時期は約2千8百年前以後、約2千4百年前以前で、活動時には断層の西側が東側に対して相対的に3-5m 程度隆起した可能性がある。琵琶湖西岸断層帯は、断層帯全体が1つの区間として活動し、マグニチュード7.8 程度の地震が発生すると推定される。また、その時、断層近傍の地表面では西側が東側に対して相対的に約3-5m 程度高まる段差や撓(たわ)みが生ずる可能性がある。




 


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Posted by nonio at 17:49 │Comments( 2 ) 地震
この記事へのコメント
  お疲れ様です!・・以前、滋賀県湖東町にはナショナル住宅の研修で滞在してました。夜の蛍の光が懐かしいです。・・10/22日更新の:『御殿場市は4つの固い岩盤プレートの重点;東海地震の中心地点だ!』:【サラリーマン編】・・・現場の御殿場市は図で表しますが、固い岩盤:4つのプレートの交点位置付近なのです。東海地震の原因たる事がわかります。怖い・・尚かつ冬は静岡県東部地方といえども御殿場市だけは別格で雪が毎年積もるのです。また愚痴っちゃいましたが、デジカメ現場写真画像を用いて記事にしました。・・実際写真を豊富に貼り面白く紹介させていただきました。<m(__)m>・・どうぞ!遊びに寄って楽しんで笑って見てやって下さい。<m(__)m> ○ 上下方!どちらかの【脳・神経・脊髄】をポチして清き1票を下さい・・_<m(__)m> お願い致します。尚!時あれば・・ヒマなときに、自分の【学生編】当過去ブログにも、当時の写真・数多くの!面白い・可愛い(猫.犬)・画像・動画もありますので、どうか!楽しんで見てやって下さいませませ。 <m(__)m>・・では、また・・
Posted by 智太郎 at 2009年10月22日 16:15
こんばんは!!
何時もながらの専門的なお話を伺え楽しく昨日読ませて頂いたのですが、時間が無くてコメント出来ませんでした^^;
危険度の確率や西岸断層帯の詳しい話も・・・・
nonioさんラジオの子ども相談室のような質問でも構いませんか(笑)・・?
プレートの事ですが、地球が出来た時から動きは始まっているのですか・どうして全体が同じ方向には動かないのですか・それに地球が存在する限り動きは止まらないのですか・止まったらどうなるのでしょうか・断層の上には建物ない方がよいのですが狭い日本断層だらけですね・予知の正確性がほしいです。
こんな質問なんですが すみません^^;
Posted by パルパル at 2009年09月06日 22:41
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