2010年12月22日 渡辺明竜王とコンピューターの将棋勝負
小生、囲碁は少々打てる。将棋は駒の動かし方が分かる程度であるが、将棋のタイトル戦などは、興味を持っていた。特に、対局者の羽織袴姿は、独特の緊張感が漂い、粋な計らいだ。最近、好青年のハンサムな棋士が多い中、26歳の渡辺明竜王の顔は、救うべくもないが、対局中の羽織袴姿は、古武士のような風格を感じる。
2010年12月15日 (水)将棋界の最高位を争う第23期竜王戦、渡辺明竜王(26)が3勝、羽生善治(40)が2勝で迎えた第6局。146手の大熱戦の末、渡辺明竜王が勝利した。竜王連覇記録を7に伸ばし、渡辺の真骨頂を見たような気がした。
七つのタイトルのうち、六つの永世称号を持つ羽生は、2期前に続き永世竜王の獲得で史上初の「永世七冠」を狙ったが、またも渡辺に阻まれた。
この竜王の称号、どのくらいの値打ちがあるか・・・。
歴史が長い「名人」のほうが上位、という感じはする。が、竜王は名人とともに将棋界序列1位として「同格」の扱いである。ところで、同一人物が竜王・名人を獲得した場合、その称号は「○○竜王・名人」と竜王が先に来て、「○○名人・竜王」とは言わない。 どうやら、竜王は将棋会の最高の位になるようだ。
因みに、賞金金額で並べればもっと手っ取り早く分かる。竜王戦優勝賞金は最高の3900万円、名人戦優勝賞金は2500万円、棋聖戦1000万円、・・・王将戦300万円とダントツだ。これで“げす”な評価であるが、自ずと位が知れる。
ところで、渡辺は、これだけしかタイトルを持っていない。2004年竜王を獲得し、現在まで、7年間並み居る敵を打ち破り防衛してきた。現代っ子、渡辺は、この金額が高い竜王戦だけを狙っているようだ。
ここまでの話、長々となったが、渡辺がどの位強い人物であるかを分かってもらえればよい。
さて、この将棋会の第一人者が、「人工知能・ボナンザ」と言うパソコンの将棋ソフトと戦う大一番が企画された。それも、平手である。今まで、プロの駒落ちの勝負が多かった。これはプロが万が一負けてもいい訳ができた。だが、今回は逃げ場のないガチンコ勝負。負ければ、将棋会のお家騒動まで発展しかねない戦いである。
先日2010年12月14日、NHKのBSで「この10年間、BSハイビジョンで放送した番組を中心に、珠玉の名作を一挙に放送します」という企画番組が放映されていた。その一連の放映の中で、たまたま2007年3月行われた「運命の一手 渡辺竜王VS人工知能・ボナンザ」を見る事ができた。この勝負、久しぶりに身を乗り出してTVを眺めた。
以前、羽生名人が話していたのだが、「終盤勝ちが確実となった時に激しく手が震え、駒をまともに持てなかった」とに言わしめた唯一の男が、渡辺だ。今度は、「人工知能・ボナンザ」対局の直前、「珍しく手が震えていた」と渡辺が明かしていた。これほどの対局滅多にない。
この人工知能と人間の対戦には、色んないきさつがある。
日本将棋会の会長米長は「兄貴達は頭が悪いから東大へ、俺は頭がいいので将棋指し」と名言を吐いた男である。
2005年10月14日、米長はプロとソフトとの対決を禁止し、「破った者は除名」と強い決意を示した。要するに「プロ対ソフト」をビジネスチャンスと捕らえている理事会が、なし崩し的にプロが敗れることがないように歯止めをかけたのだ。
2005年、当時竜王のタイトルを争っていた渡辺竜王・木村一基(かずき)七段の2人がソフト「激指」に迎え撃った。プロは角落ちのハンディであった。結果、渡辺竜王は勝ったが、顔面受けの愛称のある木村一基は負けた。
さらに、直接のきっかけとなったのは、石川県小松市でハンディなしの公開対局。五段の棋士が途中まで不利な戦いを強いられた。橋本五段は勝ったものの、「仮に早指しのルールで10局戦うとして、必ず全勝できるかと言われれば、自信はありません」と胸のうちを打ち明けた。
この対局に、理事会は下位の棋士でも「負ければプロ棋士が敗れた」となると沽券(こけん)にかかわると危機感を募らせたのだ。
そんな中、渡辺竜王との特別対局が、2007年3月21日に行われた。連盟が棋士と、コンピューターとの対局を制限してから、初めての「人工知能・ボナンザ」と公開対局だ。結果は、渡辺竜王が勝利し将棋会の威厳を保った。3月22日 、渡辺ブログのアクセス数が凄い。 20日 17685 pv 7977 ip 21日 110415 pv 79013ip
「7万ipの11万アクセスって・・・。いつもの10倍になった」と渡辺が述べていた。いかに全国の多くの将棋フアンが見守っていたかを物語っている。
公開対局はドキュメンタリー風で放映され、対局のポイントとなる場面での渡辺竜王の思考と「ボナンザ」の着手選択の過程などが紹介されて、味わい深かった。
渡辺は、『現在、プロ棋士で「ボナンザ」について一番詳しいのは僕でしょう』と言わしめるまで徹底的調べ上げているのだ。一週間ほど前から、とにかく「ボナンザ」と指しまくり、数百局を対戦。作戦は、ボナンザの得意戦法「四間飛車穴熊」で来ると予測し、この読みズバリ的中させている。プロはこういう水面下の読みもしていると、自笑。
双方、王を金・銀で守り合いの穴熊は、一枚ずつはがし合いの「こてこて」の勝負になる。渡辺は、この状態に持ち込み、勝機を見出したのであろう。 コンピューターは王手・王手をかけて「詰み」まで計算することは、正確無比であるが、一手のすきで、王を詰めるとか「二手すき」といった「必死」をかける手段をコンピューターで計算させるのは難しい。この計算できない世界に持ち込んで行ったのが作戦であったのであろう。プロの言う「ゆびうん」で勝負が決まる神のみぞ知る領域だ。
渡辺は事前準備が出来上がり、四間飛車穴熊対策もバッチリ。まず負けることはないという感触を得たが、心配もあったようだ。それは「ボナンザ」が今回用に改良されて強くなってくるのではないか。この不安も的中していたようだ。
一方、対局後、開発者の保木邦仁氏は、「ボナンザ」を強くするため、他のソフトを相手に何10万局も指したそうだ。そうすると「ボナンザ」は、「穴熊ばかり指すようになった」と述べている。コンピューターは、「この四間飛車穴熊戦法が、総ての戦法より優れていると認識しているようで、将来、総ての戦法を支配するかもしれない」と面白い話もしていた。
中盤はいつものとおり混戦模様となり、後半は渡辺明竜王の守りが光った形になった。「ボナンザ」が桂馬を一枚持っていれば、勝ちになるのだが、渡辺はその桂馬を獲っている暇がない後手必勝の形に持ち込み勝利を獲得していった。
渡辺は自身の負けとなるコースとなる手も読んでいたというほど際どい勝負であった。その勝つか負けるかのいずれかの着手の二者選択の局面の「運命の一手」を解説してくれた。
この局面で2七香なら「ボナンザ」勝ち、▲2四歩なら渡辺竜王の勝ちということを渡辺は読んでいた。この2ツしか手がないと断言。
▲2四歩がきた。「△3九竜を見落としているんだろうなぁ」と思ったようだ。だが、「ボナンザ」は勝ち誇ったように挑んできた。渡辺は「△3九竜でこっちが勝つはずなのにくるってことは何かすごい手があるのだろう」と読み筋が半信半疑となったようだ。
通常、プロは読みきった後であれば手が止まらない。だけど、渡辺の着手が止まり、念入りな読みに入った。この最後の詰めの確認に時間をかけたのが、人間らしい行為で印象深かった。
将棋的には「ボナンザ」が勝っていたようだが、終盤近くになって、「ボナンザ」に「ため」がなく勝ち急いだようだ。局後、渡辺は『コンピューターにもうっかりがあるのですね。コンピューターの終盤戦は完璧だと思っていたので少し安心しました』と。
戻って、「ボナンザ」が勝ちになる想定図を示してくれた。仮に▲2七香と打たれたら△2六金▲同香△2七歩▲3八金打△2八歩成▲同馬(参考図)となる。この手順、「飛を渡して銀も歩で取られるけど、成り角の馬を引き付けて金2枚の磐石の守りとなり、相手が歩切れになる」と読んでいた。
このような解説、プロが、負けたアマチュアに懇切丁寧に解説することが多々あるが、負けた相手に花を持たせてくれる常套手段である。コンピューターは、3九竜の読みを見落が敗因とも言われているが、渡辺は、勝と負の局面まで読みきっている凄さを見せつけた。
尚、この2ツの棋譜は、渡辺ブログを参照。
番組では「ボナンザ」の数値化した形勢判断の計算結果を、公開してくれていた。「ボナンザ」は自分が着手するごとに評価点数を表示し、「プラス」で有利だと判断し続けていた。ところで、この時点で、既に渡辺竜王は勝ちを確信していた。その直後「ボナンザ」が勝利予想の数値が次第に「マイナス」へと変わって行った。この瞬間、人間の読みがコンピューターより優れていたことを示したのだ。このシーンが印象的であった。
「ボナンザ」は負けているのに最後まで打ち続けた。投了は「ボナンザ」の作者が「参りました」と言って終わった。
今後、コンピューターが人間を超えるのは、そう遠くないようだ。
中央公論の対談で、米長は語っていた。
『コンピューターが人間を超えるとするならば、「○○新手」を作りだして、序盤から人間をリードしていく創造力を持つことが必要だと思いますね。現在でも指し手の幅が狭い終盤戦では、コンピューターは人間を圧倒しています。読み手の数で言えば、人間が一時間使うのと、コンピューターが〇・一秒使うのが同じくらいです。ですから、どちらが勝っているのかわからない局面のまま、詰むや詰まざるやの終盤になれば、これはもうコンピューターが勝ちます。
一方で、もし中盤から終盤に入るまでに若干でもプロ棋士が優勢になっていれば勝てます。将棋というのは、ミスさえなければ、少しでも優勢なほうが必ず勝つんです。
そういうことから考えると、序盤からプロ棋士が驚くような手をコンピューターが指してきて、十分に時間をかけて検討した結果、それが有効な「新手」である、ということが頻繁に起こるようになれば、「コンピューターは人間を超えた」ということになるでしょうね』
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2010年12月15日 (水)将棋界の最高位を争う第23期竜王戦、渡辺明竜王(26)が3勝、羽生善治(40)が2勝で迎えた第6局。146手の大熱戦の末、渡辺明竜王が勝利した。竜王連覇記録を7に伸ばし、渡辺の真骨頂を見たような気がした。
七つのタイトルのうち、六つの永世称号を持つ羽生は、2期前に続き永世竜王の獲得で史上初の「永世七冠」を狙ったが、またも渡辺に阻まれた。
この竜王の称号、どのくらいの値打ちがあるか・・・。
歴史が長い「名人」のほうが上位、という感じはする。が、竜王は名人とともに将棋界序列1位として「同格」の扱いである。ところで、同一人物が竜王・名人を獲得した場合、その称号は「○○竜王・名人」と竜王が先に来て、「○○名人・竜王」とは言わない。 どうやら、竜王は将棋会の最高の位になるようだ。
因みに、賞金金額で並べればもっと手っ取り早く分かる。竜王戦優勝賞金は最高の3900万円、名人戦優勝賞金は2500万円、棋聖戦1000万円、・・・王将戦300万円とダントツだ。これで“げす”な評価であるが、自ずと位が知れる。
ところで、渡辺は、これだけしかタイトルを持っていない。2004年竜王を獲得し、現在まで、7年間並み居る敵を打ち破り防衛してきた。現代っ子、渡辺は、この金額が高い竜王戦だけを狙っているようだ。
ここまでの話、長々となったが、渡辺がどの位強い人物であるかを分かってもらえればよい。
さて、この将棋会の第一人者が、「人工知能・ボナンザ」と言うパソコンの将棋ソフトと戦う大一番が企画された。それも、平手である。今まで、プロの駒落ちの勝負が多かった。これはプロが万が一負けてもいい訳ができた。だが、今回は逃げ場のないガチンコ勝負。負ければ、将棋会のお家騒動まで発展しかねない戦いである。
先日2010年12月14日、NHKのBSで「この10年間、BSハイビジョンで放送した番組を中心に、珠玉の名作を一挙に放送します」という企画番組が放映されていた。その一連の放映の中で、たまたま2007年3月行われた「運命の一手 渡辺竜王VS人工知能・ボナンザ」を見る事ができた。この勝負、久しぶりに身を乗り出してTVを眺めた。
以前、羽生名人が話していたのだが、「終盤勝ちが確実となった時に激しく手が震え、駒をまともに持てなかった」とに言わしめた唯一の男が、渡辺だ。今度は、「人工知能・ボナンザ」対局の直前、「珍しく手が震えていた」と渡辺が明かしていた。これほどの対局滅多にない。
この人工知能と人間の対戦には、色んないきさつがある。
日本将棋会の会長米長は「兄貴達は頭が悪いから東大へ、俺は頭がいいので将棋指し」と名言を吐いた男である。
2005年10月14日、米長はプロとソフトとの対決を禁止し、「破った者は除名」と強い決意を示した。要するに「プロ対ソフト」をビジネスチャンスと捕らえている理事会が、なし崩し的にプロが敗れることがないように歯止めをかけたのだ。
2005年、当時竜王のタイトルを争っていた渡辺竜王・木村一基(かずき)七段の2人がソフト「激指」に迎え撃った。プロは角落ちのハンディであった。結果、渡辺竜王は勝ったが、顔面受けの愛称のある木村一基は負けた。
さらに、直接のきっかけとなったのは、石川県小松市でハンディなしの公開対局。五段の棋士が途中まで不利な戦いを強いられた。橋本五段は勝ったものの、「仮に早指しのルールで10局戦うとして、必ず全勝できるかと言われれば、自信はありません」と胸のうちを打ち明けた。
この対局に、理事会は下位の棋士でも「負ければプロ棋士が敗れた」となると沽券(こけん)にかかわると危機感を募らせたのだ。
そんな中、渡辺竜王との特別対局が、2007年3月21日に行われた。連盟が棋士と、コンピューターとの対局を制限してから、初めての「人工知能・ボナンザ」と公開対局だ。結果は、渡辺竜王が勝利し将棋会の威厳を保った。3月22日 、渡辺ブログのアクセス数が凄い。 20日 17685 pv 7977 ip 21日 110415 pv 79013ip
「7万ipの11万アクセスって・・・。いつもの10倍になった」と渡辺が述べていた。いかに全国の多くの将棋フアンが見守っていたかを物語っている。
公開対局はドキュメンタリー風で放映され、対局のポイントとなる場面での渡辺竜王の思考と「ボナンザ」の着手選択の過程などが紹介されて、味わい深かった。
渡辺は、『現在、プロ棋士で「ボナンザ」について一番詳しいのは僕でしょう』と言わしめるまで徹底的調べ上げているのだ。一週間ほど前から、とにかく「ボナンザ」と指しまくり、数百局を対戦。作戦は、ボナンザの得意戦法「四間飛車穴熊」で来ると予測し、この読みズバリ的中させている。プロはこういう水面下の読みもしていると、自笑。
双方、王を金・銀で守り合いの穴熊は、一枚ずつはがし合いの「こてこて」の勝負になる。渡辺は、この状態に持ち込み、勝機を見出したのであろう。 コンピューターは王手・王手をかけて「詰み」まで計算することは、正確無比であるが、一手のすきで、王を詰めるとか「二手すき」といった「必死」をかける手段をコンピューターで計算させるのは難しい。この計算できない世界に持ち込んで行ったのが作戦であったのであろう。プロの言う「ゆびうん」で勝負が決まる神のみぞ知る領域だ。
渡辺は事前準備が出来上がり、四間飛車穴熊対策もバッチリ。まず負けることはないという感触を得たが、心配もあったようだ。それは「ボナンザ」が今回用に改良されて強くなってくるのではないか。この不安も的中していたようだ。
一方、対局後、開発者の保木邦仁氏は、「ボナンザ」を強くするため、他のソフトを相手に何10万局も指したそうだ。そうすると「ボナンザ」は、「穴熊ばかり指すようになった」と述べている。コンピューターは、「この四間飛車穴熊戦法が、総ての戦法より優れていると認識しているようで、将来、総ての戦法を支配するかもしれない」と面白い話もしていた。
中盤はいつものとおり混戦模様となり、後半は渡辺明竜王の守りが光った形になった。「ボナンザ」が桂馬を一枚持っていれば、勝ちになるのだが、渡辺はその桂馬を獲っている暇がない後手必勝の形に持ち込み勝利を獲得していった。
渡辺は自身の負けとなるコースとなる手も読んでいたというほど際どい勝負であった。その勝つか負けるかのいずれかの着手の二者選択の局面の「運命の一手」を解説してくれた。
この局面で2七香なら「ボナンザ」勝ち、▲2四歩なら渡辺竜王の勝ちということを渡辺は読んでいた。この2ツしか手がないと断言。
▲2四歩がきた。「△3九竜を見落としているんだろうなぁ」と思ったようだ。だが、「ボナンザ」は勝ち誇ったように挑んできた。渡辺は「△3九竜でこっちが勝つはずなのにくるってことは何かすごい手があるのだろう」と読み筋が半信半疑となったようだ。
通常、プロは読みきった後であれば手が止まらない。だけど、渡辺の着手が止まり、念入りな読みに入った。この最後の詰めの確認に時間をかけたのが、人間らしい行為で印象深かった。
将棋的には「ボナンザ」が勝っていたようだが、終盤近くになって、「ボナンザ」に「ため」がなく勝ち急いだようだ。局後、渡辺は『コンピューターにもうっかりがあるのですね。コンピューターの終盤戦は完璧だと思っていたので少し安心しました』と。
戻って、「ボナンザ」が勝ちになる想定図を示してくれた。仮に▲2七香と打たれたら△2六金▲同香△2七歩▲3八金打△2八歩成▲同馬(参考図)となる。この手順、「飛を渡して銀も歩で取られるけど、成り角の馬を引き付けて金2枚の磐石の守りとなり、相手が歩切れになる」と読んでいた。
このような解説、プロが、負けたアマチュアに懇切丁寧に解説することが多々あるが、負けた相手に花を持たせてくれる常套手段である。コンピューターは、3九竜の読みを見落が敗因とも言われているが、渡辺は、勝と負の局面まで読みきっている凄さを見せつけた。
尚、この2ツの棋譜は、渡辺ブログを参照。
番組では「ボナンザ」の数値化した形勢判断の計算結果を、公開してくれていた。「ボナンザ」は自分が着手するごとに評価点数を表示し、「プラス」で有利だと判断し続けていた。ところで、この時点で、既に渡辺竜王は勝ちを確信していた。その直後「ボナンザ」が勝利予想の数値が次第に「マイナス」へと変わって行った。この瞬間、人間の読みがコンピューターより優れていたことを示したのだ。このシーンが印象的であった。
「ボナンザ」は負けているのに最後まで打ち続けた。投了は「ボナンザ」の作者が「参りました」と言って終わった。
今後、コンピューターが人間を超えるのは、そう遠くないようだ。
中央公論の対談で、米長は語っていた。
『コンピューターが人間を超えるとするならば、「○○新手」を作りだして、序盤から人間をリードしていく創造力を持つことが必要だと思いますね。現在でも指し手の幅が狭い終盤戦では、コンピューターは人間を圧倒しています。読み手の数で言えば、人間が一時間使うのと、コンピューターが〇・一秒使うのが同じくらいです。ですから、どちらが勝っているのかわからない局面のまま、詰むや詰まざるやの終盤になれば、これはもうコンピューターが勝ちます。
一方で、もし中盤から終盤に入るまでに若干でもプロ棋士が優勢になっていれば勝てます。将棋というのは、ミスさえなければ、少しでも優勢なほうが必ず勝つんです。
そういうことから考えると、序盤からプロ棋士が驚くような手をコンピューターが指してきて、十分に時間をかけて検討した結果、それが有効な「新手」である、ということが頻繁に起こるようになれば、「コンピューターは人間を超えた」ということになるでしょうね』
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nonio
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