2010年09月18日    ブナ林のある音波山

  音波山付近には、Sクラブの仲間が下見を兼ねて何回か来ている。

 「新ハイキング関西の山」の隔月誌で、中央分水嶺・余呉トレイルのひとつ山として、壇上俊雄氏により最近紹介されたものである。この山は 今庄町と余呉町の県境の稜線上にある栃ノ木峠付近にあり、近畿圏の最北端に位置するため、交通の便も悪いところだ。 栃の木峠地図

 この山の名前は地元の山人でさえ付けなかったようだ。生活に関係のある谷には名前が付けられていたようだが、山頂は目印だけで名前を必要としなかったのだ。したがって、登山する仲間内で、この山を便宜上、音波山とつけたものだ、と山本武人著者「近江湖北の山」で語っておられた。それほど知られていない隠れた山である。

 下見した仲間の話では、音波山へ向かうルートは、関西電力の何本もの鉄塔伝いの巡視路を進み、途中から福井側に行く鉄塔№378と分かれ、余呉トレイルとして整備された尾根通しを辿り、山頂に至る。ここには見事なブナ林があり、2ツの巨木にも出会えると言っていた。

 早速、ブナ林を楽しみに参加した。

ブナ林のある音波山 国道365線沿いの栃ノ木峠の手前の広い駐車場から南側にもどったところに登山口があった。送電線用巡視路に、良く見かける硬質ゴムらしき材質の板と打ち込まれた杭がステップごとに埋め込んであった。馴染みのこの黒い板を見て、急登であることを覚悟した。

 しばらく、枝尾根の巡視路を登り詰めて行くと、右手に「ベルグ余呉」スキー場が目に入った。また、国道365号線を挟んで、樹木が無造作に伐採されたゲレンデが鉄塔越しに見えた。「余呉高原スキー場」である。「こんな奥深いところまで、開発されているのか」と思いつつ、この似つかわしくない光景をできるだけ見ないようにして進んだ。
 
 登り切ってしまうと、尾根は国境稜線となった。送電線が尾根伝いに続いていて、そこに巡視路が付けられていた。鉄塔を保護するため、かなりの幅の木々が伐採されていた。ブナ林は切り取られたような不恰好な姿の森林帯になっていた。無秩序に人の手が加えられた雑木林は哀れみを感じ、むしろ無残さが漂っていた。一しきり歩き、鞍部になったところから巡視路と分かれて音波山へむかった。

ブナ林のある音波山 最近、ブナと言う言葉には、「自然度」のバロメーターを示す代名詞として使われているようだ。ブナ林は明るく見通しもよく豊富な草も生え、親しみさえ感じ、心が自然となごむことからこのように言われるのであろう。
 
 巡視路と分かれた山道には、豊な自然を取り戻した二次林であるブナ林が広がっていた。まだ幹の細いブナが所狭しとびっしりと育っていた。若木がお互い太陽に向かって、枝葉を競り合い懸命に張り合っていた。これから何年もかかって自然淘汰され、強いものが、勝ち残り大木のブナ林帯を形成するのであろう。既に競争に負け、何本かの枯れ木もみかけられたので、より一層このように感じ取った。

 ブナ林のある音波山 巡視路と分かれた山道は、藪コキが連続するタフなところと想像していたが、予想に反して藪コキもなしで音波山に達した。三角点の周辺も切り開かれていた。幾重にも谷が重なるかなたに見える湖北の山々を満喫した。ここ頂上は、まだまだ未開地なのであろう。この地点の山名を示した標識もない素朴なところであった。

 頂上の手前のブナ林は、原生林の面影残しており、枝葉の間から、派手に枝を張り出した1本の大振なブナ古木がみられた。幹周り3人がかりほどの大きさがあった。
ブナ林のある音波山

 音波山の先にはなだらかな山並みが延々と続いていた。上谷山から三国岳、そして三周ケ岳と繋がっている。最近訪れた夜叉が池へと。パーテイの何人かは、この先の様子を確認するため、P902mまで足を延ばした。小生も参加したが、音波山頂上から少し進んだところに、傷ついたブナの巨木に興味を持ってしまい、ここに止まってしまった。

 左の枝が何らかの原因で折れ、その反対側の枝が支えきれずに倒れてしい痛々しい姿をさらしていた。この大木はまだ生きていたが、この辺りの林冠が「ぽっかり」と開いたようで、太陽の光が差し込み、この一帯が妙に明るかった。それまで日陰で待機していた若木がこれから成長し、世代交代がこれから始まるのであろうか…。これも自然の原始の姿である。

ブナ林のある音波山

 山道に一輪の山野草を見つけた。

 小生にとって、庭に咲く「ホトトギス」の草花は、第一印象が良いものでなかった。どぎつい紫色の斑点のあるけばけばしい派手な色合いといい、めしべが3ツに割れた複雑な構造が奇怪でもあった。あまり好ましくなくグロテスクさえ感じた。
 
ブナ林のある音波山  ホトトギスは色んな品種が知られている。東アジアに、約20種知られている、その内、日本には約10種が自生しており、古くから園芸植物として愛培されてきた。
 花の咲き方の向きであったり、花柄、など色々な品種を栽培する愛好家により、いじられてきた。小生にとっては、園芸店などに出回っているいくら豪華で美しく改良された品種にも興味がない。むしろ嫌悪感すら覚えた。 

「ホトトギス」の山野草には、出合ったことは何回もあるが、その都度、写真がピンボケであったり、花弁が虫食いなどで、写真を手に入れることできなかった。今回、日当たりの悪い登山路に「ひっそり」と咲いている清楚な花を観てホトトギスの可憐さを見出した。
 花弁の様子を観察するとどちらにも反らず、水平にすっと開いていた。この姿から山路ホトトギスだと思った。

 今回行ったのは、栃ノ木峠の僅か手前の駐車場までであった。この栃ノ木峠と云えば、 戦国時代に織田信長の家臣である柴田勝家が越前と近江を最短路として切り開いた道、北国街道である。 
 
 日を改めて歴史的な観点から、是非探訪したいところだ。江戸時代、北陸の諸大名達が参勤交代の行列を行い賑わっていたところだ。ここに赴き、当時、往来する旅人の吐息を感じ取りたいと思った。 この話に興味を持っていた山仲間がいたことが、すごく嬉しかった。


ルート地図
ブナ林のある音波山

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Posted by nonio at 07:47 │Comments( 0 ) 滋賀県の山
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