2009年01月06日    日本コバ周辺を探索

 12月14日、日本コバは、視界5~10m程度であった。それ以上は、霧のベールに包まれていた。

脳裏にある映像は、頂上近くに拘わらず小川が流れる幻想的な湿地があったこと、870mのピークから延びている尾根の森林帯を降っていったことなど断片的な映像しか留めていない。日本コバの頂上は、殆ど覚えていないと言うか、印象に残らなかった。
 むしろ、下山後、ひっそりとたたずむかやぶきの集落に、ゆっくりと流れる時間が形影していた。

いくら残像を繋ぎ合わせても全体の山容がイメージできない。
もどかしさに耐えられず、12月25日、再び、この山の周辺を自動車でくまなく走らせてみた。
そこは、木地師の世界でもあった。
 「日本コバ周辺地図の山域を開けてみた。 日本コバ登山
日本コバは、西方面へ尾根が張り出し角井峠に至っている。東側には藤川谷が政所町まで入り組んでおり、そして御池川は、奥深い蛭谷・君ケ畑集落に続いている。南側の山麓には、紅葉で有名な永源寺。そしてダム湖百選永源寺ダムがある。湖東平野に接している西面には、湖東三山のお寺のひとつ百済寺がある。想像以上の大きな森林地帯を形成し、その主峰が日本コバである。

奥まったところにある日本コバは、見えるところは限られてきた。日本コバの山並みを肉眼で確認できたのは、2箇所だけだった。
 

 この日は打って変わり快晴で、永源寺ダムからの眺めは、真に美しい。右には、黒尾山から張り出してきた山麓があり、正面に日本コバの山並みがある。永源寺ダムから山頂付近の眺めは、予想外だが、テーブル状である。藤川谷の外周上にある北側の日本コバ(934m)、南側の衣掛山(870m)の高低差が無かったことから、平らな山並みに見えるのであろう。

                         日本コバの山容

 日本コバ周辺を探索

 御池川沿いに付けられた多賀永源寺線の狭く曲がりくねった道を通り抜け、山深い蛭谷集落まで足を伸ばした。

木地師の本家本元の神社筒井八幡宮から衣掛山から長々と伸びている稜線が、はっきりと見えた。この尾根に沿って下山していったことを今し方のように想い出しながら、一味変わった山景に見とれていた。

                     衣掛山から伸びている稜線
日本コバ周辺を探索

 八風街道421号線から中里山上日野線を通り百済寺経由し、角井峠に寄ってみたが、日本コバの姿は見られなかった。
旧愛東町の東端にある山並みは、北から白鹿背山(標高:755m、はっかせやま)、明神山(標高:705m)、高野山(標高:685m)の三山である。この前衛峰のため日本コバは見えなかった。
 
                     白鹿背山などの山並み
   

この2つだけで、なんとなく日本コバが分ったような、わからないような。kao06

「木地師もっと読む」





  

 知らない間に、木地師の世界に迷い込んでいた。
御池川上流一帯の人里離れた山中には、木を材料にしてロクロを廻し、木挽き細工のお盆やお椀を作る人たちが活動していた集落があった。 
彼らは、原木が枯渇し始めると鈴鹿の山を離れることを強いられ、新しい木を求めて移住を始めた。その結果、日本各地に散っていった。東北のコケシ人形の故郷は、遠く離れた鈴鹿山中の山村でもあった。そして、全国の木地屋を纏める「氏子狩」等の特異な風習を伝えてきた。

 蛭谷集落は、10件程度の家があり、その内の一軒で丸電球の下で懸命にロクロを回している老人がおられた。声をかけられなかった。

仕方なく、誰もいない「ロクロ木地発祥地」の立看板の近くでうろうろしていた。そこに、たまたま自動車が来た。
老夫婦の女性は、気まずそうに立っている私に向かって「どうされたのですか」と尋ねてきた。
 わたしは、ロクロを回している状況を見たい…旨を説明すると、「おじいさんのところに行きましょう」と言ってつれていってもらった。
おじいさんは、彼女の言い回しから、地の人と見抜いたのであろう、快くロクロ作業を見せてくれた。

老夫婦とおじいさんとのやり取りでは、この村の者は、みんな小椋の名前の親戚のようであった。
この老夫婦もどうもこの集落の木地師の末えの人のようだ。「毎年、お墓参りにきます」と言っていました。
全国から故郷の蛭谷の村々に思いを馳せ、「筒井神社」に参拝しにくるとのこと。

帰りがけ、おじいさんは、「削りだしたお椀を持って帰り」と手渡してくれた。よほど気に入ってくれたのか、人里離れたところで人恋しくなったんだろう、快く貰った。大事に扱っています。

写真をクリックすると拡大

    ロクロ木地発祥地           ロクロ               もらった器     
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Posted by nonio at 08:52 │Comments( 1 ) 滋賀県の山
この記事へのコメント
こんばんは~!
ロクロの作業を見る事が出来て良かったですね。
木地師資料館も見られましたか?
カエデ・トチ・ケヤキ・スギ等で作られているとお聞きし、何か買ってきましたが何処かへいってしまいました。昨年まで小椋さんから賀状もいただいてました。
鄙びた山里でした。
Posted by パルパル at 2009年01月06日 21:25
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