オリンピック大野将平の一言

nonio

2021年09月01日 16:55


 
 じりじりと照り付ける真夏の花と言えば、群植された「ひまわり」だ。
 黄色く色付いた大輪が、 盛夏の乾き切った大地に根を張り、こちらを見ている。一斉にすべての大輪が同じ方角を向いている見目姿は、まさに、オリンピックの「金」を目指している選手達のようだ。

  この中で、一本だけ、飛びぬけた「ひまわり」があった。



 新型インフルエンザが世界中で猛威を振るい、パンデミックに陥っている中で、開催された東京五輪。
野党は声高らかに「すぐにオリンピックの停止」をと。また朝日新聞だが、五輪中止を強調する見出しで、反対を表明した。海外の報道でも開催には懐疑的であった。
 これに上乗せするかのように、新競技場の計画白紙から始まり・・オリンピックが始まる直前の開会式の演出担当者解任など、数々のトラブル・不祥事・スキャンダルが、次から次へと続いた。  
 この呪われた五輪を跳ねのけたのは、この男の一言であった。

 8月9日早朝、柔道男子73キロ級の大野将平選手が、オルジョイ選手に勝利し、2連覇金メダルを獲得した。
試合後のコメントは「賛否両論あることは理解しています。ですが、我々アスリートの姿を見て、何か心が動く瞬間があれば、本当に光栄に思います」と。 
 柔道の試合と時を同じに、ストリート文化から発祥したスケートボードの金メダルの若者達も目立った。「試合を楽しんできた」と答えるアスリートが多い中、大野将平は、重厚な存在感を示していた。

 大野将平が金メダル獲得後のインタビューでは、
前回のリオオリンピックで金メダルを取ったということは、倒す相手がいなくなった。
だから、「倒す相手は自分だ」と・・・・・。
修験僧の雰囲気を醸し出していた。
 超一流選手が見せた所作・言葉には、私だけなく大勢の人がパンデミックに立ち向かうエネルギーを授かり感銘を受けたものだ。

 心技体を揃った彼は、一本勝ちにこだわり、勝っても敗者を慮り、余計な感情を一切表さず、儀礼正しく一礼して会場を後にしていた。
いつもは、無表情でコートを去る彼。優勝決定戦の戦いが終わった際には、奥歯を「グイ」と噛みしめるしぐさが、未だに思い出される。

 東京2020で史上最多58個のメダル獲得―金は27個であった。 
各国のメダル獲得数を金銀銅の合計で比較するものと金メダル獲得数だけで評価するものとがある。やはり、多くに国では、金メダル獲得数で各国の順位を決められているようだ。金メダルは、後塵を拝さない座なのだ。銀メダルとは、頂点に届いていないのである。

 でも、私の心に刺さった銀メダリストがいた。
「1番じゃないと嫌なんです」 負けず嫌いの「清水希容」の演舞の表情が忘れられない。
空気を鋭く切り裂く容姿には、鋭い気迫が指先までみなぎっていた。
 あどけない少女の顔から、鬼をも打ち殺す形相に変わっていく表情に見惚れてしまった。
清水は「ここまでくるのにすごく…すごくしんどかった。ここで勝ちたかったですけれど、悔しいです」と流れる涙をぬぐっていた。
実らぬ悔しさをにじませていた。

 私の心に刻み込んでいったアスリートは、この二人。身をもって戦い、言葉を残していった。

最後に、
 人形付きのオリンピック ビクトリーブーケがメダリストたちに贈呈さられた。元々は復興五輪として決まった東京五輪。復興の象徴として、「ひまわり」が用いられた。
宮城県石巻市の大川小学校では70人の子供たちと10人の先生が津波の犠牲になった。犠牲になった小学6年生の女の子のお母さんが「この丘にひまわりが咲いたら、あの子が喜んでくれるかも」と、ひまわりの種が植えられ、毎年ひまわりが咲くようになったと伝えられている。ひまわりには、そんな親たちの願いがあった。
 ところで、東京五輪・パラリンピックの選手村で提供される食事に福島県の食材が使用されることについて、物議をかもしたのが韓国。 
韓国各紙は、「メダルを取ると、放射能危険のあるブーケをもらうことになる」と揶揄していた。バカバカしい話だが。

 ところで、メタリストを受け取った韓国の選手には、ブーケの受け取りを拒否する人物がいなかったのが幸いだ。






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