山中の倒木を憂う/貴船山
2019.12.14日、四季を通じて賑わうコース貴船山→滝谷峠→貴船神社へ出かけた。出町柳駅に立つと、「あ~北山連峰が連なる洛北か」との思いがこみ上げてくる。かつて、ここから八瀬・大原へ、奥深い丹波へと・・・・、ここは“京都北山”登山の出発点であった。
叡山電鉄終点の鞍馬駅から二つ手前の二ノ瀬駅は今も昔も変わらない疎らな農家のある閑静なところ。
駅から人がめったに通らないのか、あぜ道が貴船川まで設けられていた。
”ユリ道”をたどり、貴船山(699m)に向かった。丹波では、緩い道を訛ってユリ道と呼ぶようである。確かに、山腹を巻くように設けられており、無理せず高みへと導いてくれた。道端のところどころに、人の気配を感じられる瓦の破片、そして北山杉に混じって自然林の巨木が見られた。この道には、古道の面影が漂っていた。
余談になるが、荷を運ぶ牛馬が貴船神社のある貴船川沿いの道を通ることを憚れるとして、貴船山東斜面の山中に通された道である。今はひっそりとした道だが、二ノ瀬と芦生をつなぐ峠道として、平安の頃から生活道として盛んに使われていたようだ。
手入れの行き届いた人工林の北山杉
”ユリ道”の自然林の巨木
さて、昨年下見をした仲間が、「ユリ道のV字谷が大崩落し、倒木が散乱。続いて滝谷峠から奥貴船橋まで樹々が、なぎ倒され、荒れ方がひどかった」と驚いていた。
ユリ道のV字谷が崩落し、倒木が散乱
森林の惨憺たる荒れ模様は、ここだけではない。この付近の廃村八丁・半国山、そして三上山も同様。
2019年も8月の九州北部豪雨に続き9月、10月と相次いで関東広域を襲った大型台風で、いずれも甚大な被害をもたらした。
今年最強クラスの台風19号は、近畿をかすめただけだが、今だに山中に大きな爪跡を残している。特に、三上山では100年位の檜が何本も根元からなぎ倒され、これほど荒れた樹木を目にしたことがない。
最近の天気予報で、超大型の台風という言葉が聞くようになった。これからは常態化するのだろう。
何億年という長い年月をかけて地中にため込まれた化石燃料を、たかが200年近くが経過する過程で、際限なく使っていれば、誰が考えても二酸化炭素の増加による温暖化が明白である。
地球を取り巻く膨大な海水は、ゆっくりと熱を受け入れていたが、ついに、海水温の上昇に伴い超巨大化の台風を育てる暴挙にでてきたようだ。
「地球温暖化は加速しており、ティッピング・ポイント(それを超えると一気に加速する閾値)に近づいている」と、気候学者らが警鐘を鳴らしている。これは恐ろしいことで、一旦「臨界点」を超えると、人間の手によって押しとどめることが不可能になると云うのである。
地球の気候に多大な影響力をもつ要素のうち9つが、後戻りできない臨界点に近づいている。そのうちの2つが西南極と東南極の氷床の融解であり、他にはアマゾンの喪失、広範囲での永久凍土の融解などがそうだ。
つまり、複数の項目が連鎖的に「臨界点」を超えると、豪雨の頻度が増え、地球温暖化による災害のリスクが高まり、人類が住めない灼熱の地球へ・・・・・。
このような気候変動に対応するために、世界では国際的な会議として気候変動枠組条約加盟国による締約国会議(COP)が1995年から毎年開催されている。だが、COP25では、環境と経済のはざまで各国の対応策の足並みが揃わないまま閉幕した。強欲な人類の集まりは、行き着くところまでいかないと収まらないようだ。時遅しだ。
今年のタイム誌の顔になったグレタ・トゥーンベリ。スウェーデンの女子高生さんは、
「よくそんなことができますね!あなた方の空っぽの言葉によって、あなた方が私の夢を、子ども時代を奪ったのです」と嘆いている。
関連記事