土中埋め込み大根

nonio

2023年04月03日 06:34


 今年は、雪がよく降ったのか、土中に埋め込んだ大根が美味しく仕上がった。
輪切りにした”風呂吹大根”は、私にとって、日本酒に合う肴。味噌に砂糖を加えて作った「田楽味噌」をのせると最高だ。

 毎年大根は、11月ごろになると、葉っぱを切り落として、地中で冬越しさせます。野菜の端境期になるころ、見栄えが悪いが、みずみずしい大根を掘り起こしては、頂いています。
こんなことをすると、腐るかと思われますが、大丈夫です。それどころか、甘みが増して来ます。北海道など寒いところでは、雪が降るまで収穫せずにそのまま土の中に置かれ、『甘さがのる』と言われ「雪大根」として売られているぐらいです。

 では、なぜそうなるのかというと、大根に含まれている水分は、0度になると分子同士が結びついて氷となってしまう。凍ってしまうと細胞が壊れて腐ってしいます。そこで、真冬の寒さでも凍らせないために、自ら甘み成分をつくりだし生き延びるための術を、気の遠くなる歳月をかけて身に着けたようです。

 大根には「ジアスターゼ」という消化酵素が多く含まれていますが、この成分によって、大根に蓄えていたタンパク質をアミノ酸に変えたり、またデンプン質(炭水化物)を糖に分解させます。この物質によって、水の分子に 割り込み、0度では凍らなくさせているのです。「凝固点降下」と呼ばれる現象です。「 希薄溶液の凝固点降下度は、溶質の種類には関係なく、溶液の質量モル濃度だけに比例」していることまで、知っているのです。つまり、雪の下など寒いところに、置けば置くほど糖度が上がるというわけです。

 保存という意味合いだけでなく、このアミノ酸は甘味、苦味、酸味などのうま味をもっており、風味に変化をもたらしているのです。
 
 【大根にとっては、寒さから身を守ろうとしたのだが、人にとっては、甘くて風味があると頂いている】
この構図、いかがなものか? だから、私は野菜への感謝をもって頂いています。
改めて、生き物たちの生きるための工夫には、驚かされます。






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