針江のかばた

nonio

2012年01月08日 01:35

  数年前、琵琶湖を徒歩で一周したことがあった。この時、高島市針江の集落に湧き水を利用する「かばた」と言う言葉を知った。

 安曇川の河口は、三角州が発達して、琵琶湖に出っ張るような形をしていた。内陸部を横断するように進めば最短距離になるのだが、「可能な限り、琵琶湖の湖畔を周遊したい」との思いから、近江今津から高島市新旭水鳥観察センターを経由して、湖畔沿いの安曇川今津線を進んだ。通称、湖周道路または風車街道と呼ばれている道路だ。
 このあたりは、安曇川が運んできた土砂で遠浅になっていて、湖岸沿いに湿地や砂浜、入り江が形成されていた。湖畔にはヨシなどの水生植物が生え、その背後地にはカワヤナギ類の樹木などの自然林が育ち、昔日の琵琶湖を彷彿させる原風景があった。

 針江大川にやって来た時、仲間のK氏から「この川には、上流がない」と変なことを言い始めた。
続けて「針江地区辺りに、湧き水が自噴しており、この水が集まり、針江大川になっている」と説明を受けた。どうも、安曇川の伏流水が、地下の何らかの障害物に遮られて湧き出し、上流のない川を形成しているようだ。
更に「生水の郷を知っているか」と聞かれた。私は、「いや」と答えると、琵琶湖一周を何回も行っているK氏は「針江一帯には『川端(かばた)』と呼ばれる水場があり、家庭の炊事や洗い物の生活用水として使われている」と得意げに話してくれた。
 この時、先を急いでいたので、何時の日か針江に訪れたいと思った。 

 その後、野洲市役所の「生きがいづくりの会館外研修会」で「川端(かばた)と街並を見学」のお知らせの文字を目にし、早速出向くことに決めた。10人ほどにグループ分けされ、それぞれに「針江生水の郷委員会」のガイドさんが付いた。

 集落には網の目に水路が張り巡らされて、水路が家の中に取り込まれていた。各家庭思い思いの工夫を凝らしたかばたがあったが、基本的には同じ構造であった。
 水路が取り込まれた「端池」には鯉が飼われていた。ここでは鯉が泳ぎまわり野菜、果物、食器を洗ったりしていた。端池には食べかすや野菜屑、使用された皿や鍋などを沈めておくと、端池内に飼われている淡水魚が食べ物の屑を全て食べてしまう。また、鯉以外の5cmほどのヨシノボリなど淡水魚が琵琶湖から遡行して来ると話されていた。ここ「かばた」は、琵琶湖と湧き水と繋がる特異なところであった。

 管を地下に差し入れれば、水温13度前後の湧き水が自噴してくる。この湧き水は一旦壷池に溜められ 、この水は飲んだり、野菜、果物を冷やしたりしていると説明された。独特の集落の暮らしや人々に接することが出来た。



 集落を流れている小川には藻が繁茂しており、所々に小さな梅の花に似た白い花も見かけた。季節外れに咲いた清流にしか育たない「ばいかも」のようだ。案内のガイドさんによれば、年に何回か、住民総出で清掃作業をされている。この共同作業を通じて、環境をよくする意識が、より一層芽生えてきたと語っていた。

 
 各家庭に取り込んだ水は、集落の中央を流れる針江大川を通って、琵琶湖に最終的に流れ込んでいるところだ。ここは、NHKが取材を続けてきた「映像詩 里山命めぐる水辺」が撮影された場所である。やっと見つけた三五郎さんの船着場である。
 
 そっと近づいたのだが、私の足音に気づいたのか、突然、辺りの静寂を破って、枝にとまっていたサギが飛び出し、続いて数匹の野鳥が、懸命に水面を蹴りながら飛び出した。その後、何も起こらなかったように林の中に吸い込まれるような静けさが戻ってきた。ここには手付かずの安らぎを感じるところであった。  
   
 冬季の様子を見たくなり、国道161号線の東側にある滋賀県道333号安曇川今津線に行ってみた。滋賀県高島市北船木附近を起点に高島市北浜交点に至る一般道。この辺りは、一面雪に蔽われ、厳しい自然が広がっていた。 



 今まで、我々は効率や暮らしの快適さを求めてきた。蛇口をひとひねりさえすれば、水がえられる便利な時代に、昔ながらの水とのかかわりかたを見る事ができ、改めて水の大切さを感じさせられた。

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