三上山でホトトギスとの出会い

nonio

2023年11月17日 09:38


  数年前から、希望が丘・三上山の登山路入り口に、ひっそりと佇む「ホトトギス」を見つけて以来、その存在に興味を抱いていました。というのは、この花の生息に関する報告書や、この周辺で見かけたという話も聞いたこともありませんでした。山野の一角に潜む希少な花であることを知りながらも、当時はそれほど心を引かれるものではありませんでした。
 たまたま、我が家の庭には台湾系ホトトギスの交配種を植えていました。この花の模様や色彩とが驚くほど類似しており、その生い立ちには特に意識を向けることなく、美しいが、むしろ重ぐるしい印象でした。

 ホトトギスの容姿は、昆虫たちにとっては魅力的なのでしょうが、私にとっては奇妙なものに見えました。雄しべと雌しべの区別が難しく、6本の雄しべが花の中心に寄り添い、雌しべは3分裂し、さらに細かく2分裂する複雑な構造。これはまさに虫を引き寄せ、受粉を促す巧妙な戦略であることは理解していました。これからも、この花の容姿がますます複雑に変化していくのでしょう。

 私は心の中で、もっと簡潔で美しい姿が好ましいと思いながらも、江戸時代から続くホトトギス愛好者たちがいたことから、人は美しさに異なる視点を抱えているのでしょう。

 そこは、山道の端には崖が迫り、水がにじみ出ていました。木漏れ日も差し射し込み、この花にとっては安住の居場所なのでしょう。当初2本程度育っていましたが、現在6~7本に増えました。そして、今年になり、その花を愛でに訪れる人々が増えてきました。そして皆さん口々に「ヤマジノホトトギス」と語り始めました。私は、園芸種でなかった場合、それは日本固有の「ホトトギス」だと思っていました。その名前には、どうしても馴染めない感覚があり、じっくりと観察し、調査を重ねてみました。

 この自生しているホトトギスの花被片の基部には黄色の班紋が見られますが、ヤマジノホトトギスの基部の黄色の斑点がないことからどうも違うようです。また、ホトトギス類の花被片の反り返る状態でも判断ができますが、茎の繊毛の生え向きに注目してみました。茎の繊毛が上向きに生えていました。ヤマジノホトトギス(ヤマノホトトギス)は、下向きであることから、ヤマジノホトトギスと呼ばれているのは間違いであるとわかりました。さらに、花被片の基部近くの内面が黄橙色になっていることから、園芸種の台湾ホトトギスと日本固有のホトトギスに絞られてきました。

 庭に咲いている園芸種のホトトギスは、花茎は頭頂部で四方に分岐して多くの花を咲かせています。しかし、自生しているホトトギスは、行儀よく順番に葉のわきに花をつけていました。このことから、どうも、日本固有のホトトギスのようです。この内容を仲間に話してみると、何となく納得してもらいました。

 今回は、つぼみから風に任せて花が散るまで、そして実を結ぶまで見守りました。この間、一本も盗掘されることもなく、無事終わりました。来年も楽しみにしています。









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