城山裾野のコクラン

nonio

2017年10月25日 08:11

 
 
  希望が丘・三上山周辺で、いまだ目にしたことがない植物に出合うことがある。冷ややかな人に、「それがどうした」と言われようが、私にとって これ以上類のない至高の出会いである。


 希望が丘の北稜コースの西端に位置する城山の山麓を分けいっていた。山頂から下って行く登山路は、草が生い茂り、踏み跡も消えかけていた。しばらく、右往左往しながら歩みを進めた。
盛夏のむんむんする深緑を通り過ぎると、風が通り抜けている人口林に出ると、いつの間にか、登山路から作業道に変わっていた。

 これまで、昼でも薄暗く、下層植生も失った”緑の砂漠化”した人工林に出合うことが多かった。が、この一帯の樹林は、間伐などの手入れも行き届き、気持ちがいいほど明るい森林帯であった。
林の中まで光が射し込み、樹木の下に小さな草木も育っていた。

 ドンドン下って行くと、 一隅に、誰かが手厚く育てているような山野草に出合った。十株ほどひとかたまりになって、ひっそりとたたずんでいた。花を咲き終えたのか、葉間から伸ばした花茎も枯れかかっていた。

 従前の私は、 花が終わった山野草に出合っても見過ごして行った。今の私は少し変わっていた。
山野草に精通した山仲間達は、葉の形とか葉のつき方や花の枯れた花茎などを手掛かりに、楽しそうにあれこれと詮索していた。色んな楽しみ方があるものだと、教えられたことがあった。花が咲いていなくても、むしろ、山野草をより深く知ることができるようだ。

 既に枯れた長く伸びた一本の花軸を子細に観察すると、数個の花の柄が見られた。長い花茎に小花柄をもつ花をつける形は、ラン科ではないか・・・・・・。 
葉っぱは、葉と茎を接続しているところが、幅が狭く、次第に幅が広がり、先端に行くと再び狭まっている。この葉っぱは、長径と短径の差が小さい広楕円形であった。そして、葉先が尖り、葉の周辺部は切れ込みのない滑らかなものであった。
 
 まだ花を見たことがないので、断言できないが、これらの特徴からして、「コクラン」と推しはかった。城山の山麓にコクランが自生しているとも聞いていたので、ますますそう思えてきた。
 
 黒蘭は、花の色が黒いことから付けられたのであろう。実際の色は黒より明るく、暗紫色に近い花を付けるらしいが、目立たない質素な色である。
 昆虫や鳥に花粉を運んでもらうために殆どの花の色は、鮮やかな色彩をしているのに、敢えて黒色を選ぶのか。自然界の多様性と言うか、人間では計り知れない不思議さを感じる。
 
 例えば、黒ユリの臭いは、百合の花と思い嗅いだらとんでもない。高山という特別環境では、色彩でなく強烈な臭いを放って、ハエ(ケブカクロバエ)を呼び寄せている。
コクランにどんな昆虫が訪花しているのか知らないが、昆虫をおびき寄せる巧みな能力を持っていることだろう・・・・。

 まだ見ぬ、「コクラン」の花をあれこれ想像することは、楽しいものである。

「滋賀の山野に咲く花700種」の書籍によれば、コクランは「見ていてあきない山野草」と記されている。多分、花はユニークな姿をしているのであろう。来年が楽しみだ。希望が丘・三上山周辺の32番目の山野草「コクラン」になった。

 「ふるさと館」から城山へ。山頂から「辻ダム」に下りるつもりだったが、コクランに気が取られ、国道8号線沿いの平田機工(小堤)に迷い出た。自動車を駐車させておいたところまで戻るのにかなり手間取ってしまった。


 まだ咲いていない花としては、サイハイランがある。
希望が丘・三上山周辺の幻の30番目

 山仲間が10年近くも見守ってきたのだが、盗掘されてしまった。 一昨年、幾らか持ち直したが、その後、衰弱枯死してしまい、希望が丘からサイハイランの姿が消えてしまった。

 先日、念のため訪れてみると、なんと、葉っぱが見られ、その生命力に驚いた。
僅かなバブルが地中に残っていたのだろう。兎に角、希望が丘の唯一のサイハイランなので復活してほしいものだ。






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