冬に咲かせた秋丁字

nonio

2022年12月30日 03:18


 山仲間Mさん達との話の中で、山野草の「アキチョウジュ」について盛り上がった。秋に咲き、丁子(釘という意味)のような形をしているので、こう呼ばれているようだ。

 そこは、鏡山連山の山麓。『ややうみ坂』・『のどの千軒跡』へと通ずる一帯であった。
かつて、薪を調達した古道で、赤ちゃんを産むぐらいの急な坂であったことから、『ややうみ坂』と言われるようになった。が、今では人も入らない森閑とした僻地。それゆえ、山野草も豊かなようである。
 「アキチョウジュの群生は、圧巻だねぇ」との一言から、どうしても一度立ち寄ってみたいと心が動いた。

晩秋のある日、5人で訪れる日がやってきた。

 この花を間近に眺めてみると。
今にも壊れてしまいそうな繊細なガラス細工のような姿態。風が吹けば、お互い触れ合い音を奏でるようだ。そんな中、淡い色合いのアキチョウジュが、私をまねいていた。この色調に、私が翻弄された。
 
 空や海の澄んだ色だが、単なる青色ではない。紺色にしては透明感がない。つゆくさの花にちなんだ明るい薄青色だから露草色なのであろう。いやいや、水のような青色を縹色(はなだいろ)と言われている。その濃さによって「深縹、中縹、次縹、浅縹」さらに淡い青は「水縹」と呼ばれている。
この色合いにも多少違和感が・・・・。回りまわって水の色を模した淡い青色は、「水色」に落ち着いた。

 このアキチョウジュは、私を魅惑した「秘色」であった。

 「水色」をしたこの花は、さえ冴えと凍った氷柱ように見えたので、とうとう真冬に咲かせてみた。
山野草は四季の移り変わりにしたがって、花が咲くのだが、私にとっての咲く時期は、気分次第。時には咲くことも咲かないこともある。

     ー自然の摂理に抗うのも、また楽しいー






    

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