希望が丘のコバトンボ草
トンボ草、正式にはコバノトンボ草は、3年越しに探し求めていた山野草である。トンボ草と言わずに、わざわざ、”コバ”が付けられているのは、オオバトンボソウ(大葉蜻蛉草)に対して、葉っぱの数が少ないで小葉蜻蛉草と呼ばれていると教えてもらった。
さて、名前はかなり以前から知っていたが、どうしても希望が丘周辺で、ラン科特有の姿をしたこの花を見つけることが出来なかった。周囲の草色と同じであり、その上、かぼそく突っ立っているので、草陰に見落していたかもしれない。
山野草との出会いは不思議なもので、山野草の名前を求めて、山野を駆け巡っても、中々出会えないものだ。 希求する山野草に出合えるためには、季節であったり、その年の気象の条件であったり、土壌の状態であったり、数々の要素が揃わなければならない。一つでも欠けると開花した山野草に出合うことが出来ないようだ。どだい、人が勝手につけた山野草の名前から山野草を探し求めるのが、邪道かもしれない。自然界に出向いて、当てにせず偶然見出していくのが、よい。
いずれにしても、コバトンボ草は、”希望が丘”に生息している№19番目になった。
梅雨の中、鏡山のモトクロ山にコバトンボ草に会いに行った。この山麓には水が絶えることがない小川が谷間に沿って蛇行しており、サギソウ、モウセンゴケ、ミミカキグサ類などが群生する湿地を形成している。 トンボソウはこの余り肥沃でない湿地を好み、このような場所にしか生育していないようだ。出合える季節は7月ごろである。これだけ必要にして十分なる情報を得ていたのだが、出合えるまで3年がかりである。
実際に初めてお目にかかったのが昨年である。写真を撮りに再び見つけた場所に行ったが、盗掘されたのか、場所を間違えたのか、どうしても見つけることが出来なかった。そして今年やっと見つけた。それも、一本だけでよかったのに、あっちこっちで。
コバ トンボ草は、見れば見るほど味わい深い不思議な姿をしている。後ろにピンと跳ね上がっている。この部分については、専門用語で”距”と呼ばれている。花びらや萼(がく)の付け根の突起部分が、一方から一方まで間があいていることから”距”言う文字があてがわれている。
同じ方向に向かって並んでいる姿は微笑ましい。もっと大きく写せる「マクロレンズ」が欲しくなった。
鏡山に咲くコバノトンボ草
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