竹林に咲く「ウバユリ」
「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」 と美人の姿や振る舞いを花に見立てて形容する言葉があります。百合の花が、風になびいて揺れるさまを優雅な女性にたとえたのでしょう。
さて、野洲川河辺林にある竹林のボランティア伐採作業をしている時、ユリにしては大ぶりな薄黄緑色した数個の花を見つけました。花弁は百合によく似ているので百合と思うのですが、何かが違っていた。この何かが分からなかった。
眺めている内に、わかってきた。日ごろ見慣れていた百合は、か細い茎に支えられた花弁をうつむき加減にして、控え目に風に揺れていた。が、この花弁は風にも動じない水平又は上向きにがっしりとしていた。そして、花を咲かしながら根元の葉が枯れかかっていた。どう見ても、百合と言えない、やぼったい容姿であった。
タキイに勤めていた仲間のS氏に「この花なんという名前」と尋ねると、即座に「うばゆり」と返事があった。
「『うば』とは老女の姥、それとも乳母」と聞きなおすと、
そうだな「姥と書くようだ。花が咲いている下の葉(歯)がぼろぼろと枯れているところか、”姥”とつけられた」と説明してくれた。
私は、山野草の名前を確認することにこだわってきた。名前の由来を聞くことにより、一層その植物に親しみが沸くからだ。 しかし、山野草の名前は、いい加減なものも多い。つけられた山野草が可哀そうにと思うこともある。ところで、この「うばゆり」は、つぼみを持っているのに、姥とつけられているのが、いささか気にもなるが、この花が醸し出す姿からすると、命名はうまく言い当てているようだ。
ところで、私は、乳母と書いた方がしっくりしているように思った。
すでに乳母という言葉は死語に近いが、遠い昔、宮廷貴族では、がっしりとした乳母が生母になり代わって、歯がなくなるまで生児のために授乳させた。このことにちなんで、「乳母ゆり」してはどうかと思った。
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