「庭に咲く小さな旅人」草花イオノプシディウム・アカウレ

nonio

2025年02月17日 10:08

 我が家の庭の片隅に、ある朝、十字型の花弁を持つ小さな白い花を見つけました。その名は、イオノプシディウム・アカウレ。―はるかポルトガルを故郷とする異国からの訪問者だった。

 約10,770kmもの距離を隔てた地から、風に運ばれ、鳥に託され、あるいは人の営みに紛れて、この地で新たな生命を紡ぎ始めたのです。

 夏の蒸し暑さが残る庭に姿を見せなかったこの花は、秋の気配とともに芽吹き始めました。寒さが増すにつれ、高さ10センチほどの可憐な姿で、ハコベとともにカーペットのように広がっていきました。

 冬の静寂に包まれた朝、雪間から覗く白い花びらに心惹かれ、ガラスの器に水を湛えて一株を移してみました。花は三日間、私の傍らで健気に咲き続けましたが、やがて花びらを落としたので、再び庭土に還してやりました。

 この小さな生命は、私たちに深い気づきをもたらしてくれます。風に乗って種が運ばれ、鳥が大陸を越えて花を繋ぎ、季節の移ろいとともに命が息づいていく―自然界には、人が引いた境界など存在しないのです。だが今日、世界では為政者たちが国境や民族という人為的な壁を築き、争いと破壊の連鎖を生み出しています。

 毛利飛行士が「宇宙からは国境線は見えなかった」と語ったように、イオノプシディウム・アカウレもまた、その可憐な姿で同じ真実を私たちに伝えているのです。もし、あなたの庭にもこの白い花が咲いているのなら、じっくりと観察してみてください。きっと、地球という大きな庭で共に生きることの意味を、問いかけてくれることでしょう。








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