アケボノツツジが咲く祖母山

nonio

2013年06月29日 06:59

 滋賀県から、九州の山へ行くには遠くて諦めがちになるようだが、船便を利用して船中泊すれば、割安で九州の日帰り登山ができる。気が向いた山があれば、出かけている。
   
 数年前から、祖母山(そぼさん)に行きたいと友人に話していたのだが、今年、 5月17日~19日に行く計画を立ててくれたので、4人で出発した。大分県(豊後大野市、竹田市)と宮崎県(西臼杵郡高千穂町)にまたがる、標高1,756mの山である。 この山は、深田久弥が選んだ『日本百名山』のひとつでもある。

 九州の百名山は、宮之浦岳(屋久島)、開聞岳、霧島山、 阿蘇山、久住山、祖母山の6つあるが、今まで、私は 霧島山、 祖母山に登っていなかった。今回の祖母山を行ったとして、あと霧島山が残ったことになる。だが、この山を登れば、九州の山が制覇できたと喜んでいるわけではない。結果としてあとひとつの山が残っただけである。私は、深田久弥『日本百名山』の信奉者でない。

 深田久弥は、名山の基準として山の品格であり、山の歴史を尊重し、さらにその山が備えている個性を重視された、その上に1500m以上の高さも加えた。これは、必要条件として定義つけたものだ。十分条件として 「心休まる印象に残るこの山に、もう一度この山に訪れたい」と慕われる山が名山と言えるのではないか。つまり、名山を決定するためには、必要にして十分でなければならないと思っている。
今西 錦司の「名山考」では「名山かならずしも好きな山でなく、好きな山かならずしも名山・・・・」と述べている。要するに、名山は個人が決めるものと思っている。

 祖母山には色々のコースがあるが、神原(こうばる)コースを辿った。 
神原(9:20)~一ノ滝~5合目小屋(10:30)~国観峠(12:10)~祖母山(13:00)~往路~神原(16:00)
 登山口近くに、「山頂上まで5km、およそ4時間」の案内版があった。沢沿いに付けられた森林に覆われた道をゆっくりと歩いていった。やがて、御社の滝を通過して5合目小屋に順調に到達した。

 
 5合目小屋から谷川を離れ、急勾配の階段となった。今までの気楽な歩きから一変して喘ぎながらの急登の連続となった。ササ帯を抜けると国観峠に出た。ここは、展望もよく、大勢の登山客が一休みしていた。
 この峠から赤土のぬかるみの道を、ひとしきり上り詰めると祖母山の頂上に至った。
国見峠広場から祖母山を望む

祖母山の頂上からの眺望


 苦労して登ってきた祖母山の頂上直下にアケボノツツジが迎えてくれた。このツツジは、標高1000m 以上の高山地帯の岩場で自生しており、その場所まで行かなければ出合うことができない厄介な植物であると共に愛くるしい。4月 下旬~5月上旬に開花するので、今回の山行では時期的に遅いので、出会うことが出来ないと半ば諦めていた。が、祖母山の頂上で見ることができ、幸運であった。風も強く吹きさらしの岩場で、勝手気ままに無造作に伸びた枯れ木のような枝に、鈴なりにかよわい花をつけていた。花弁をよく観ると、風に打ち負かされ、傷んでいたものもかなりあった。
 自然界は不思議だ。こんな過酷な環境下では、堅牢な花弁をつければいいのに・・・・。

 頂上にて咲いていたアケボノツツジ


 アケボノツツジは、夜明けの淡いピンク色が「曙」の色に似ている事からその名がついた。花は枝の先に1つ付き、直径3~5cmほどの丸みがある花びらをつけていた。可憐な曲線を持ち合わせていることからして、優しい性格をした植物だろうと勝手な想像をしながら、この場で、しばし休息をとった。

 満足して、大分港から出発した神戸六甲アイルランド港に戻ってきた。年を重ねてくると、後どれだけの山を登れるかわからないが、常に好奇心を絶やさず、挑戦していきたい。


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