晩秋の蛇谷ヶ峰
久しぶりに蛇谷ヶ峰にやってきた。山麓は秋の様子だが、頂上付近は、薄雪となり冬枯れ支度になっていた。晩秋の吹きぬける冷気に、まだ慣れていない肌には、一層寒さが堪えた。
今年は、高島トレイルを縦走したので、蛇谷ヶ峰は何回ともなく眺めた。三国峠・百里ケ岳・駒ケ岳・行者山などは蛇谷ヶ峰を取り巻くように連ねている。この地形から否応なしに「ピカット」光る物を目にした。これは、蛇谷ヶ峰近くの西峰に立てられた無粋な反射板である。峰々が幾重にも重なる自然の中に決して馴染まない建造物にも拘らず、目印としてあてにしてしまう不思議な存在であった。
この山は、比良山系の最北端に位置する。武奈ケ岳(1214.4m)から北に向かってツルベ岳(1098m)、地蔵山(789.7m)と高度を下げ、ヨコタニ 峠 ・ボボフダ峠あたりからゆったりとして高度を上げた蛇谷ヶ峰(901.7m)が見られる。
登山口「畑」へいく途中、自動車の正面から見える蛇谷ヶ峰が神々しい。特に、晩秋の空気が澄み切った折、薄冠雪した山並みが気に入っている。ここは、国道161号線の白髭神社を越え、国道勝野の信号を左折し、県道296号をまっすぐ山側に向かう道路上である。 長くのびた裾野は一層山容を誇らしげにしている。
朽木からの蛇谷ヶ峰が一風変わっている。興聖寺の秀隣寺庭園は、安曇川によってつくられた少し高台になった段丘の縁にあり、ここから眺める蛇谷ヶ峰は乙なものである。
日を改めて小雨の中、秀隣寺庭園に訪れた。庭園には雨にぬれた石組みの亀島、鶴島、中央付近の自然石の石橋が配置され、その借景に横たわる蛇谷ヶ峰があった。
ここでは、蛇谷ヶ峰と呼ぶより、オグラスで通っている。漢字で「小椋栖」と書くことから、木地師に関わる人達がこの山をそう呼んでいたのであろう。
辛抱強くここに留まり、景色を眺めていた。すると雨足がだいぶ収まり、うす雲になり始めた途端、オグラスの山水画の世界が広がってきた。だが、直ぐに、山影は雨雲に覆われてしまった。縮小写真←
蛇谷ヶ峰へ登るコースは色々試している。厳冬期、想い出の森・いきものふれあいの里から林道・遊歩道辿り頂上へ。又、近江高島の県道296号線で山側に向かい、「富坂口」のバス停から玉津島神社を通り、蛇谷の沢を渡ってp475mから尾根筋を伝って朽木スキー場出合p805mを目指したこともあった。蛇谷ガ峰←クリック
このルートを辿った時、「蛇谷ヶ峰」の謂われが分かった。山頂から鴨川へ流れ込む谷が「蛇谷」と呼ばれ、蛇谷ヶ峰と付けられた。このように谷の名前がその山名になっている事例はままある。
なお、蛇足になるが、行っていないのが、桑野端から天狗の森を通り頂上に至るルートである。この天狗の森は秀隣寺庭園の借景となっているところと言われている。是非、訪ねたいところだ。
さて、今回はボボフタ峠より尾根筋に出てP702からP752を通り頂上に上ることになった。このルート、2回計画があったが、いずれも異常な積雪で阻まれたところだ。
高島市畑バス停の登山口から、頼もしくでっかいS女史リーダーに引率されて出発していった。 畑バス停から2本道路が山手に延びているが、橋を渡らず北方向に進み集落を抜けていくとあぜ道になった。
周りは日本の棚田百選の一つに選ばれた「畑」の棚田が広がっていた。傾斜に逆らわず階段状に作られた棚田は山際まで続き、稲は既に刈られていた。
この空間、人がつくった幾何学模様ではあるが、心が和むところだ。
ここは、四季折々美しい景観が見られるところだが、冬景色の棚田はもっとよい。
高島棚田の冬景色←クリック
地元の人しか通らない植林帯を通り抜けボボフダ峠の標識のある登山路までやってきた。ここから本格的な登山道となった。登りはじめにの谷筋には、倒木も多く、落葉で踏み跡も分からなくなった。何回も行き先を確認しながら進んだ。そのうち踏み跡もハッキリとした山道となりつづら折れを繰り返し、どんどん高度を稼いでいった。登りの勾配が少緩やかになった時、直径1m以上ある大きなモミの木が現れ、峠が近いことが分かった。直ぐに尾根伝いの縦走路になっているボボフダ峠に到着した。この峠の正式名は須川峠である。
ここからは、緩やかなアップダウンの稜線歩きとなった。 10分ほどで「滝谷の頭」朽ちかけた年期の入った道標に出合った。 標高点P752を過ぎたあたりから、薄っすらした雪が地面を覆っていた。標高P790m辺りから始まる急登をこなし、後は、なだらかな登りで蛇谷ヶ峰に着いた。
後を振り向くとツルベ岳・地蔵山は僅かに冠雪し、冬の到来が近くまでやってきていた。蛇谷ヶ峰の山頂は、まだ雪待ちである。これから雪が積もっては消えを繰り返して、根雪が出来上がると白銀の世界へと変わっていくのであろう。
ここはいつも風が吹きぬけていくところであるので、少し下に降りて昼食をとった。 頂上からの眺めは360度見晴らしのよいところだ。
午後から天気は崩れるとの予報があった。予報通り北西寄りの雨雲が、忍び寄るように峰々を覆ってきた。吹きつけてくる風は一層体を冷やし、まだ寒さに慣れていない体は、芯まで冷えてきた。 早々に来た道を通り下山にかかった。雪混じりの氷雨が降り出し、辺りを雪景色に変えていった。滑りやすい急斜面であったが、バランスを取りながら一気に駆け抜け「畑」に戻ってきた。集落のある辺りまで下って来ると、あれだけ寒かったが、嘘のように温かであった。
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