余呉トレイル柳ケ瀬山・行市山
日付 2010年11月21日
山名 柳ケ瀬山・行市山
コースタイム 木ノ本駅・柳ケ瀬バス停留所 9:40 柳ケ瀬山10:40
昼食11:30~12:10 行市山13:15 別所山14:00
毛受兄弟墓15:00 今市バス停留所 15:33
近頃、北国街道沿いの山に行く機会が多くなった。湖国から北陸へ通り抜ける玄関口に近い柳ケ瀬山・行市山へ行くことになった。
ここは、最近発行された「中央分水嶺・余呉トレイルマップ」(三国岳~夜叉が池~栃ノ木峠~柳ヶ瀬山~行市山。ウッディパル余呉で販売)間の約40kmの一区間でもある。この山脈の続きは降った雨が太平洋側と日本海側へ分かれる「中央分水嶺」であり、まだまだ豊な自然が残っているエリアである。
また、1583年、織田信長が亡き後、その後継を巡り、柴田勝家と豊臣秀吉が賎ヶ岳の合戦で天下取りを争った場所である。「勝家」は「柳ケ瀬山」から「行市山」周辺に陣取り、「秀吉」は「木ノ本の山」から「賤ヶ岳」あたりに陣取った。この舞台となったここには、多くの歴史愛好家が訪れてくるところでもある。
JR野洲駅から木之本駅、そしてバスに乗り換え国道365号を北上し、柳ヶ瀬バス停留所に降り立った。
偶然にも、山仲間のH氏とばったり出合った。彼とは北・南アルプス等共に行く親友である。親元に帰ってきていたようだ。
彼の話では、「昨日、この里に親子連れの熊が、ギンナンの実を食べにうろついている」と話してくれた。
たまたま、我々も、「今年の夏は猛暑が続き、ブナ、ミズナラ、コナラなどが実をつけない凶作となった」いや「ブナ・ナラの凶作の周期に重なった」など色々議論しながら、クマの異常出没について話し合っていたところであった。
最近、クマに襲われ重傷を負った報道がされている中、このように近くにクマの存在を知ると、少し気が引き締まるものだ。動物の生息場所に「これから入らせてもらうんだ」と言う謙虚な気持ちになった。
クマに我々の存在を知ってもらうようにと、熊鈴を鳴らし、携帯ラジオのボリュームを上げ出発していった。 余呉川に架かる橋を渡り、玄蕃尾城への標識を見遣りながら林道に入った。
この刀根越えの林道は、近畿と北陸とをつなぐ重要な道で、結構幅が広く歩き易い道であった。高みへと導いてくれる。無理せず、登っていけるように工夫がされていた。明治の頃まで使われていた古道である。
久々坂峠(刀根越)の標識がある深く掘れこんだ峠は、昔の面影を偲ばせるところだ。少し手前の南東尾根の末端から取り付き、いきなりの急登を登っていくと、一歩踏み込んだ笹の中に四等三角点があった。柳ケ瀬山(439.2m)で、別名中尾山と呼ばれている。ここは最高点でないので、見過ごしてしまうところであった。
再び刀根越えに戻り、右手の急登を登りきると縦走路に入った。樹林の中の緩やかな坂道を進んでいく内に昼頃になった。木が伐採され、笹藪が刈り払われている広場を見つけ休憩となった。
昼食後、長い道程ではあったが、徐々に高度が上がっていく行市山へ向かった。
縦走路の右側には無名の山々が広がっていた。山の斜面には、杉が育っていた。樹形は三角錐状の美しい形をしているので自然林のようにも見えたが、よく観ると下部の幹が見えていたことから、枝打ちをされた人工林である事が判った。それにしても、これほど見事な幾何学的に植えつけられた植林帯は初めてであった。
小さなアップダウンを幾つか通り抜けていくと、背丈を越える笹となり山頂にでた。この山道は丁寧に笹が刈られ整備されていた。
行市山(659.7m)頂上からの眺望は素晴らしい。眼下には箱庭のように並んだ家々のある余呉町があり、北国街道を跨いで湖北の峰々も遠望できた。最近行った菅山寺・呉枯ノ峰、その後の己高山さらに遠くの伊吹山を地図と照らし合わせながら、確認した。
更に、以前の戦国時代へと思いを馳せていった。
この山の南には「秀吉」が構えた「賤ヶ岳」がある。「勝家」は行市山から別所山・中谷山へ延びた尾根伝いに最前線を張ったのであろう。ここは敵方の様子がよく見える場所であり、山全体が堅固な砦となっていた。北国街道、塩津街道をも監視していたのであろう…と。
行市山は戦国時代に東野行一の山城であったことから山名の由来となった。賎ヶ岳の合戦では、北軍の柴田勝家方の武将佐久間盛政の陣地があった所である。下って行くと前田利家・利長父子が築いた別所山(444m)砦跡があり、さらに下ると、中之谷山の原彦次郎長頼の砦跡があった。この間を人馬によって駆け抜けられるように結ばれていた。この道筋は、紅葉が真っ盛りとなり、森林浴もでき気分も最高であった。
毛受(めんじゅ)兄弟墓跡の墓まで下山してきた。主君柴田勝家を北ノ庄に返すため勝家の馬標を受け取り、身代わりとなって、戦い討ち死にしたと伝えられている。地元の人達によりここに手厚く葬られていた。
今し方登って来た、なだらかな姿をした行市山を背後にして、今市バス停留所へと急いだ。
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