2013年03月13日    雪の賤ガ岳

 2月23日、大勢の人数で山本山から賤ガ岳間を冬季縦走する予定があるので、積雪状態を確認するため、2月16日案内役4人で出かけていった。でも、この日は運悪く天気回りがよくなかった。
 彦根地方気象台によると近畿地方は冬型の気圧配置が続いており、湖北や湖西を中心に雪雲が流れ込みやすい状態が続いている。  上空に新たな寒気が流れ込むため、15日夕方から17日にかけ短時間に大量の雪が降る「ドカ雪」が見込まれと注意を呼びかけていた。

 野洲では、前方に顔を向けられないほどの雪風が吹きつけてきた。何とかなるだろと思いながら、自動車の助手席に乗り込んだ。名神高速道路を北上していくと、彦根あたりから、降雪が激しさを増し最悪状態になった。それでも、進んでいくと、意外にも米原辺りから降雪もおさまり、リフトのある長浜市木之本町の大音(おおと)に到着した。昔、養蚕が盛んなところで、琴糸や三味線糸の大音糸として知られているところだ。

 ここにやってきたのは、理由があった。 昨年、大音に下山したとき、地元のおばあさんの一言があった。「このあたりは、時折ドカ雪になることがある。いっときに、どっさりと雪が降り積もり、家から出られなくなる。それは大変なことやで・・・」と話していた。
 湖北地方は雪が多いところである。地形的に敦賀湾から流れ込んでくる寒気団が雪雲を運んできて、雪を降らせる。冬の終わりにドカ雪に見舞われることがあるところだ。
 
賤ヶ岳の登山口である観光リフト場は、静まりかえっていた。 運行期間は 4月上旬から11月下旬だけであった。
リフト沿いに付けられたジグザグの登山道を辿っていった。裏日本特有の灰色のくすんだ雲が垂れ下がり、重苦しい雰囲気の中、黙々と登って行った。
 
雪の賤ガ岳

 でも時折、一瞬、真っ青に澄み切った晴れ間が見えることがある。その時は「ほっと」するものだ。

雪の賤ガ岳

 賎ヶ岳(標高422m)の頂上からの眺望は、素晴らしいところであるが、眼下には湖北の琵琶湖がうっすらとその広がりを見せていた。北側には羽衣伝説の余呉湖も、雲でかき消されていた。唯一、賤ガ岳山麓にある大音・西山地区の集落が、雲の切れ目から箱庭のよう点在している様子が窺えた。鉛色の曇天が次から次へと流れ込み、雲が集落の上に重くのしかかっていた。 これらのひとつひとつの集落には、思い入れがあった。
 井上靖の「星と祭」を読んで湖北の十一面観音像を知り、夏の暑い盛り、十一面観音を求めてこれらの集落を訪れたことがあった。それぞれ集落の村人によって手厚く守り継がれていた。この湖北の豊かな風土を感じながら、すっかり雪に埋もれた集落を眺めていた。

 一面雪に覆われている賤ガ岳の頂上は、物音ひとつしない。雪は音を吸収してしまうからだ。時折、猛烈に吹き抜けていく風が吹き上げると音がやたらにやかましい。だが、風雪が止むと、しんしんとした静けさが辺りを包み込んできた。熱い珈琲を啜って、一息入れて下山していった。

雪の賤ガ岳

 冬季用道具を持ってきたが、積雪量もすくなく使用せずに踏破でき、初期の目的を達した。





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Posted by nonio at 09:05 │Comments( 0 ) 滋賀県の山
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